木曜日, 6月 01, 2017

学会が終わって ーーーー4

あっという間に早6月となった。学会発表から2ケ月足らずの5月24日にはデータチェックが一段落し、今度の論文はアカマツ林の枝の直径階分布はこれまで言われていた-1.5ではなく、他の樹種や根茎(系)の直径階分布と同じ-2.0であると正式に英文で出そうと思い始め、元指導教官にも5月25日付で書簡を送っておいた。その返書が昨日届いたが、返書は意外なものだった。文章を考えるのが苦痛なので勝手ですが今後の返信を休止します、とあった。それで、拙ブログで発表の練習を兼ねてそれを発表する気になった経緯を述べることにした。

すでに日本語で学会発表してあるが、論文として発表するにはいくつかの問題点があった。しかし、書いた本人でさえ、どうやってやったか、思い出すのに相当苦労した。ましてや指導教官おや!?といったところであり、思い出して新規に理解し直した自分ですら、時々間違っているかも!?と何度も再計算し直す有様である。

会社にもってきている外付けHDにダブっていくつもあるファイル群から目的のファイルを探し出すのにもやはり2月ほどかかってしまった。Microsoft Excel 97-2004 Workbook (.xls)のファイルで目的のファイルの最初の日付を見ると2003年9月28日などとある。学会発表は1991年の春だから15年ほど後となる。自分は忘れていたが、ブルガリアへ行ってから幹に関する英語論文を書いて受理されたのが2001年1月19日なので、その後第2作目を作ろうと色々努力した跡が窺える2報アイディアと称する書きかけの(英文)論文が8報ほど見つかった。若い番号の日付は2003年4月7日などとなっている(Word文書)。

会社からこちらへ持ってくると最初の日付が全く変わることもあるが、幸い同じMacなので、こちらへ来る前から残っていたファイルを探すと皆残っていたのでそちらは原本として複製してもう1台に移し、万一上書きなどしてしまっても、復元できる。

この最初の学会発表、1991年の発表は今回チェックしてみて数式は大丈夫だったが、審査員が大阪市立大の方で1971年に築地書館より森林の生態学を出された方でコメントなどから、ご本人とすぐに判明。この発表の予稿が事前に発表されると、知り合いの某大学の教授から、枝の表面積の推定って?どうやるんだ?とメールが来たことを覚えている。ただ当時は単に野外で重さを測れば上の式で係数Kの推定地を使えば良いとしたが、1983年以降は、実測の枝の表面積合計と材積合計から(計測誤差を含む)から密度(個体によって0.44から0.54まであった)を考慮せず,、材積からk求める方法に変更していた。その推定したkをもとに表面積を計算し、実測値と比較する方法をとった。

それは大体枝の散布図を見ると大体傾きは(α=2)-2らしいが、個体ごとにばらつき、その傾きが一意的に決めかねる欠点があり、劣勢な試料個体では1.5ぐらいだし、優勢な試料では2以上になるという傾向であった。

さらに測定方法にも最低2方法があり、通常簡単な方法で行えば良いかどうかの問題があった。
測定方法の検討

ここでA法とは今回初めて採用したアカマツの枝を各節毎に切断し、節間長と節の中央直径の最大直径と最小直径を測定し、平均直径を求める。B法とはそれまでパイプモデル理論などの基となった、枝の最大直径を枝の付け根からスタートし、10センチ間隔で枝の先端まで皆測する方法である。B法の方が枝の表面積はよりきめ細かく測定できる利点があるが、手間がそれだけ余計にかかる上に、この研究の出発点となった、アカマツの枝の年齢区分の処理に難点が出る。このA, B両方で通常の最小2乗法で求めるとB法の方が傾きは大きくでる傾向があった。しかし、森林の生態学の著者やその後の研究者らは、最初に決めたアカマツの枝の直径分布の傾きは-1.5と決めてしまっていた。今回のデータチェックでまず気になったことは、どうやったらαの値を一意的に決めれば良いのかということだった。

A法で計測したアカマツ林分の枝の結果を次に示す。

閉鎖した林分の試料であるためか、αのバラツキは大きく、試料数が少ないために決定的な結論が出しづらい結果となっている。

これは試料木一覧の一部である、散布図の例ではページの制約のため6号木しか出ていないが、この6号木では地ぎわで幹がフォーク状に二叉しており、6-2号木もデータ数が少なく鬱閉した林分のため、小個体だからと言って無視できない。ここで、平均直径指数というのは、人間や犬の肺模型の気道の分岐を研究した日本人研究者たちの提唱した論文の用語であり枝分かれの途中で空気がスムーズに流れるために肺の気管の枝分れがどうなっているか生体の気管にプラスティックを注入した試料を細かく測り、そのデータを分析したもので、論文を送ってもらった。

肺の分岐は大体二叉であり、直径指数は3が想定されるが、実際のデータ散布から計算するとそれに近い結果が得られた。マツの枝分れはBifurcationではなく軸から3ないし5とか多分岐であるが計算を進めると2に近くなった。最初これを使おうと思っていたが、数値解析の手法で理解できない部分があったので断念した。フラクタル構造との関係で調べていたら出て来た論文であり、北岡女史は北岡内科病院を継いだお医者さんで、形の研究で農工大の高木隆司(形の数理)研究室へ進み、海外へ出て一時大阪大におられたが、最近また海外におられる様子。

この頃からαの値は2前後との予想が強まっていく。
直径指数の計算データの一部。時期はやはり2003年秋。今回データをチェックし、αの計算法をチェックしたが。なぜこういう計算をしたか思い出せない状態が一週間も続き焦燥感が募りさらにまた一週間ほど悩み、しかし、エラーが出てこないので、最大試料の3号木と最小試料の6−2号木しかやっていなかったので、コピペで残りの試料も全て数値チェッし、計算式を全て書き出し、ようやくかってやった計算の意味がおぼろげながら姿を現して来た。




これは小生が大学を卒業する頃に書店に並んだ築地書館発行の森林の生態学(月1971年6月1日発行)の84ページに載っているマツの枝の直径階分布は他の樹種や根とも違い通常-2であるのにマツ類とカンバ類などの一部の陽樹では-1.5に近い場合が多い、という説明資料だ。このグラフをみる限りなるほどマツ類の枝の直径階分布はなるほど-2ではなく-1.5
なのだろうと思う。しかし、彼らと同じB法で測定したアカマツ林の枝の例を見ると通常の最小2乗法でも傾きは(ー)2.04などとなっている。(図−1。測定方法の検討)上の図では明らかに根の傾斜とは違うように描かれている。上の図でも最小直径の値はたったの1点、最大直径クラスの値は4点もあり、傾向線はそうした値を考慮していないように見える。数値の大きい試料の影響の方が小さい試料たった一個の影響よりも大きいはずだ。

そこで、学会発表でも使った方法で、両対数グラフから近似値を読み込みエクセルで解析してみた。

エクセルのグラフの右上部分が読み取った全データを最小2乗法で推定すると確かに(ー)1.515となっている。そこで、最小直径だけを外して同様に行うと、右下のグラフとなり、さじ加減で(ー)1.985などとなってしまう。だから計算機が未発達の当時、数値解析などは多分していないだろうし(卒業二年前ぐらいに電算器が研究室行きた)、グラフ用紙にプロットした最もそれらしい傾向線を引いてαは1.5程度としたことは責められない。しかし、現代の発表では適当な話は通らないだろう。
測定値に誤差がつきものだがそれでも得られたデータに対していく通りも傾向線が引けるというのはいただけない。



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