木曜日, 8月 13, 2015

宮崎正弘の国際ニュース・早読み (人民元、三日連続の切り下げ

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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 
平成27年(2015)8月14日(金曜日)
  通算第4625号   <前日発行>
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 中国人民元、三日連続の下落(4・65%)
  西欧の市場が日本より揺れている
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 8月13日、中国人民銀行は為替レートの管理率をまたさげた。
これで三日連続、4・65%の通貨下落となった。すでに日本の市場では中国関連企業の株価が悪影響をうけており、とくにJFEは10%強もの下げとなった。

 上海株式暴落と、当局の強圧的コントロールを目撃して世界の投資家は慄然となった。これはまともな「市場経済」ではなく「独裁市場の操作株価」、つまり市場は死に体同然なのである。

 海外勢の一斉脱出がつづき、当局は通貨切り下げで応じた。

 通貨下落をもろに被ったのは、日本ではなく通貨では豪ドルなど資源輸出国と、中国の貿易依存度の高いアセアンの一部の国々、しかし深刻な影響が広がっているのはドイツ、仏蘭西、英国の株式と投信市場である。

 欧州は「やがて中国経済が米国を越える」という観測がこれまで強かったため、遠いミステリアスな中国のことを幻像でみていたからだろう。
 さるにても、人民元下落テンポは、まだ穏やか、下落は続くとみたほうが良い。
            ○◎○◎○
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  樋泉克夫のコラム  樋泉克夫のコラム  樋泉克夫のコラム
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 樋泉克夫のコラム
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【知道中国 1279回】             
    ――「市店雜踏、穢臭衝鼻、覺頭痛??」(岡20)
     岡千仞『觀光紀游』(岡千仞 明治二十五年)

   ▽
 9月7日、日本領事館に安藤領事を訪ねる。フランスに留学し、海外の事情に通じている同領事は清仏戦争に対する清国側の対応を、「東洋の国々は西洋人との間で問題が起る毎に、必ず賠償を払って事態を納めてきた。いま、『中土(しんこく)』は賠償を払うことを肯んぜず、少額でも構わないと息巻いている。私はヨーロッパのことを学んでいるが、こういったことは最近の百年にはなかったことだ。ただし『中人(ちゅうごくじん)』は太平の余りに万事に亘ってダメになっているから、彼らの対応が最終的に何を生み出すことになるのか判りません」と語り、岡に対し北京行きを勧めた。

 激しくなるフランス海軍の福建攻撃に対し、中国側の対応は無定見が過ぎているといったところ。いま、いくつかを拾ってみると、

  ――「中土」が開戦を宣告しないから、フランスの軍艦は香港に入港し、薪炭糧食などを積み込み故障を修繕している。これでは平時と同じだ。東洋では「公法」が行なわれていないから、かりに「中土」がフランスに対し宣戦布告をしようとも、局外の各国に対し兵器売買を禁止することはできない。局外の各国は中立の立場を堅持しているから、「中土」は何処の国からも兵器を買うことが出来ない(9月16日)――

――(福州攻撃に際し)フランス海軍の総勢10隻軍艦が一気に砲火を浴びせるや、「中兵」の砲は一発も反撃できないままに、「死傷千百」の惨敗である。フランス海軍が意気揚々と引き揚げた後の海域に死体が溢れていた。だが収容する者はいない、とのこと。この姿を見た西洋人は「殆ど國政無し」と。指揮官は遁走し、砲台に備わっていたはずの「官金三十萬、潰兵の攫去(もちさ)る所と爲る」。全く以て規律がないとはこのことだ(9月18日)――

 ――(アメリカ人の観戦記によれば)フランス海軍の軍艦は3日の戦闘の間、周辺海域を常に遊弋していたが、清国側は敢えて備えをしてはいなかった。およそ海軍が敵艦と遭遇したなら、将校は敵に隙を見せぬように怠ることなく操船するもの。だが清国海軍は無防備であったがゆえに大敗を喫してしまった。新造大砲を備えたフランス側は開戦からの15分で、清国側の7隻の戦艦、3基の砲台、1カ所の造船所を破壊した。こんなにも早く勝敗の決した海戦は古今の歴史書にも見当たらない(9月19日)――

 ――上海には西洋人が「中土學士」を雇って発刊されている2紙がある。両紙合わせて3万部といわれ、新聞報道が盛んだ。だが、編集に一定方針がなく、たとえば?籠(基隆)や福州での戦闘に関しては「道聽塗説(ウソ)と訛謬(デタラメ)」が極めて多く、記事は杜撰に過ぎる(9月20日)――

 ――(清国の友人に向って)フランスによる攻略は激しさを加えるばかりで、清国側の対応は危ういばかり。まるで穴の開いた船で深淵に入っていくようのものだ。こういった情況に、李鴻章は如何なる策があるのか。(すると友人は)李鴻章は国家の運命を担うこと20年に及び、何百万という国家財産を使っているものの、富強の実績を挙げたことはない。まったく茫として風を捉まえるようなものだ。朝廷は太平天国平定の功績を重んじ、罪を問うことはない。李が任用する人物は「奔竸小人(せこいしょうじん)」で「輕?俗吏(こずるいこやくにん)」のみで、日に日に人心は離反し、国事は苦境に陥るばかり。現在の惨状に至った原因は、全てが李鴻章の所為だ、と――

  こう見て来ると、「殆ど國政無し」という表現がピタリと当て嵌まりそうだ。だが、岡は「此れ、豈に中堂公(りこうしょう)一人の罪ならん乎」と反問した後、日頃から考えていたと思われる「國政」の挽回策を友人に向って滔々と語りかけた。
《QED》
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読者の声 どくしゃのこえ READERS‘ OPINIONS 読者之声
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(読者の声1)「満洲は中国に属する」これは伊藤博文以来日本政府の公的な言明でした。
 しかし主権国には状勢によっては言明を翻す権利があるので、満洲事変に先立つシナ側の数多の暴挙を理由にして、従来の言明を変更することは不可能でない。
かくて満洲国はある程度、長期的にはともかく、国際的に、蒋介石にすら、承認される可能性が見えてはいた。塘沽停戦協定後に、情勢は一応の安定をみた。
・しかし口実はあったにせよ長城線を犯して拡大した冀東、冀察となると、余りにも行き過ぎで、日本の自己統治能力さえ疑われる。いっぽうの中国はどんどん変化しそれなりに近代化が進んでいるのに―道路、航空網、幣制改革。国民は満洲事変で曙光を見る思いがしたのに、また重苦しいムードがのしかかる。
・さすがに識者、政府中枢部では、政策転換の必要が認識され始める。参謀本部(石原莞爾)自体が、「従来の帝国主義的侵冦政策」は、改めるべきと認める。
すなわち西安事件の衝撃を受けた直後の37年1月6日付参謀本部作成の「対支実行策改正意見」では、
(1)帝国の対支強圧的マタハ優位的態度ヲ更改シ……
(2)北支特殊地域ナル観念ヲ清算シ…冀察政権ノ管掌スル地域ハ、当然中華民国ノ領土ニシテ、主権亦其中央政府ニ在ル所以ヲ明確ニス……「帝国ガ従来ノ帝国主義的侵冦政策ヲ放棄シ…」などと記されている。(大杉一雄『日中戦争への道』)
・参謀本部がみとめた「帝国主義的侵冦」を、こんにちの政府が否定するのは極めてむつかしい。
和辻哲郎のように「大きな物語」だけ語るわけにいかず。安倍首相は現在の難しい政局のなかで、どんな智慧をみせてくれるか?
(石川県、三猫引)
 


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(読者の声2)「阿川弘之氏と海軍善玉論」。作家にして文化勲章受章者である阿川弘之氏がさる8月3日94歳で逝去された。阿川弘之氏といえば海軍予備学生出身者(阿川氏は海軍第二期兵科予備学生)という経歴から海軍をテーマにした小説を多く書いたことで知られる。
海軍予備学生の青春を描いた『春の城』、『雲の墓標』から『山本五十六』、『米内光政』、『井上成美』の海軍提督三部作、あるいは『軍艦長門の生涯』など多数にのぼる。また晩年は『高松宮日記』が刊行された際の編集委員もつとめた。

 阿川弘之氏は終戦後復員してから志賀直哉に師事して作家としてデビューしたが、その文章は端正にして気品のあるものであったといえよう。また保守の論客として長年『文藝春秋』の巻頭随筆を執筆し、日本李登輝友の会の初代会長もつとめた。
昭和43年東大紛争の最中、東大の林健太郎文学部長が本郷キャンパスで全共闘に監禁されるという事件が起きたが、阿川弘之氏は三島由紀夫氏とともに東大へ駆けつけ、全共闘の非を訴えて林健太郎学部長の解放を求めたことがあった。このとき林健太郎学部長は8日間にわたる監禁にもかかわらず、全共闘の突きつけた要求をすべて拒否し、その剛直ぶりにさすがの全共闘も感嘆したという逸話もある。

  三島由紀夫氏がその晩年二・二六事件の青年将校の心情に傾倒していったのに対して、阿川弘之氏は終生徹底した陸軍嫌いで通し、二・二六事件や昭和維新運動に理解を示すことはなかった。
逆に『山本五十六』をはじめとする海軍提督三部作では、山本五十六、米内光政、井上成美の海軍親米英派トリオを称揚し、いわゆる海軍善玉陸軍悪玉論を世間に流布する先駆けとなったといっても過言ではない。
戦後、占領が解除された昭和27年以降多くの戦記物が出版されるようになったが、吉田満の『戦艦大和の最期』や特攻隊の記録作品は世間の感動を呼び起こし、昭和30年代に入って戦前海軍記者として鳴らした伊藤正徳の『連合艦隊の最後』や『大海軍を想う』などの作品がベストセラーとなり、次第に海軍善玉論、海軍美化論が主流となるようになり、昭和40年代以降阿川弘之氏の海軍に関する作品はこの海軍美化論を決定づける役割を果したといえよう。
阿川弘之氏と親しかった三島由紀夫氏は阿川氏の代表作『山本五十六』はじつは阿川氏の思いが詰まった『阿川五十六』だとからかったそうである。
尚、三島由紀夫氏の自決後、阿川弘之氏は「三島由紀夫の思い出」という文章を書いている。(講談社文芸文庫『追悼の文学史』所収)
  戦後ドイツでは国防軍善玉ナチス悪玉論が主流となり、現在につながっているが、日本においても悪かったのは陸軍であり、海軍はサイレント。ネービーであったがゆえに強引な陸軍に引きずられて戦争までいってしまった、という陸軍悪玉海軍善玉論の歴史観が主流となっている。
阿川弘之氏は自身が青春を捧げた帝国海軍に対する思いが強かっただけに、海軍を美化する心情を強く持たれたことは理解できるが、そろそろあの戦争における陸軍と海軍の公正な評価をするべきときであろう、と私は思う。最後に阿川弘之氏のご冥福を祈って合掌。
   (玉川博己。三島由紀夫研究会代表幹事)
 

(宮崎正弘のコメント)小生、長い海外旅行中だったので、帰国後、不在中の新聞を読んで、阿川さんの訃報を知りました。個人的には氏とはいろいろな想い出があり、横浜の自宅を初めて訪ねたのは昭和四十三年でした。まだ佐和子さんは中学生、『イヌと麻ちゃん』のモデルとなった犬がいました。長男の尚之さんは、高校生で村松剛さんの作品を読んでいると言われた。
 三島事件に関しては海軍志向の立場からか、一歩の距離がありましたが、愛国の精神はよく理解されていたと思います。小生が電話したのですが、憂国忌の発起人は辞退されました。
 小説作品はともかく、『文春』の巻頭随筆で李登輝台湾総統を「アジアの指導者どころか、世界の指導者ではないか」と書かれ、これを読んで台湾旅行をおすすめし、李登輝さんに会われる段取りのお手伝いをしたこともあります。氏は「招待旅行はいやなので、自分で費用をすべて負担して行きます」とおっしゃった。
その後、日本李登輝友の会の初代会長を引き受けられました。その前後、台湾大使の宴席に阿川先生夫妻、竹村健一夫妻、そして小生夫妻が参加しての夕餉があり、夜遅くまで歓談したことが昨日のことのように思い出されます。合掌。
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宮崎正弘 v 室谷克実『仲良く自滅する中国と韓国』(徳間書店)
宮崎正弘 v 川口マーン惠美『なぜ中国人とドイツ人は馬が合うのか?』(ワック)
宮崎正弘 v 石平『2015年 中国の真実』(ワック、シリーズ第五弾)
宮崎正弘 v 西部遇『日米安保五十年』(海竜社)   
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宮崎正弘のホームページ http://miyazaki.xii.jp/
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