水曜日, 6月 03, 2015

宮崎正弘の国際ニュース・早読み (北朝鮮にロシアが異常接近)

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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 
平成27年(2015)6月3日(水曜日)
   通算第4562号 
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 中国の北朝鮮冷遇の隙間につけいったロシアの巧緻
   最高人民会議議長、国防相、外相らが相次いでモスクワ詣で
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 中国の北朝鮮への冷たい態度はまるで氷のように凍てついて、駐平壌大使は軽量級。虫の居所が極端に悪い習近平が言ったことは「中国はこの地域の安定を望んでいるが、政権の安定を望んでいる訳ではない」だ。

 この中朝冷却の政治状況に巧みに乗じて北朝鮮に影響力を増大させているのがロシアである。ソ連時代、北の最大の保護者でもあった。
 
2014年2月以来、両国の要人の往来は激しくなり、金永南(最高人民会議委員長)がソチ五輪に出席したのを皮切りに、同年十月にはリ・スヨン外相、十一月にはヒョン・ヨンチョル国防相がモスクワを訪問した。
答礼にモスクワからはガルシェカ極東開発大臣が3回、ユーリ・ツルゼフ(副大臣)らが平壌を訪問している。

2015年になって四月にヒョン・ヨンチョル国防相が改めてモスクワを訪問し、同年五月に金永南が赤の広場の軍事パレードに参列した。頻度激しい相互訪問に比べると、北京の反応は冷たい。

 ロシアは2015年を「北朝鮮友好年」として政治イベント計画中といわれる。
 五月9日の軍事パレードに参加しなかった金正恩は、国際デビューの機会を見逃したことになるが、ロシアは北朝鮮に対して暖かい姿勢を続ける。

金正恩が大事な外遊と認識しながらも、平壌を留守に出来ないのは、不在中の軍事クーデターを警戒するからであろう。

 ロシア極東部に出稼ぎにでている北朝鮮労働者は、すでに五十万人といわれ、この労賃収入によって、北朝鮮は食料危機を回避しているとも観測されている。

 実際にウラジオストクやナホトカをあるくと建設現場には北朝鮮からと見られる労働者が3K現場で働いており、カザフスタンやウズベキスタンの出稼ぎ労働者と一緒に建設作業をしていた。

 「2013年二月の三回目の北の核実験以後、中国は対北政策を極端に冷却化させてきた。6者協議も、おそらく16年秋の米国大統領選挙以後に持ち越されるだろう」(ジェイムズタウン財団『チャイナ・ブリーフ』、5月29日号)。


 ▼中国の苛立ちは本物だが、時間的余裕が狭まった

 北朝鮮に対する中国の不快感は宗主国として、家来が言うことを聞かないという単純な理由からの反発、冷遇だが、中国軍の配置を一覧すると、遼寧省の北朝鮮国境に瀋陽軍区の主力部隊およそ10万から20万人ていどを貼り付けており、いざという場合に軍事介入できる態勢にある。

 たとえば親中派の軍人等がクーデターを起こし、非常事態宣言布告後、治安維持のために中国軍を「平和維持部隊」として派遣要請するシナリオが考えられるだろう。
 瀋陽軍区は装備に優れ、機動力もある。鴨緑江を挟んだ国境の町=丹東(日本時代の安東)までの鉄道を利用して多くの装甲車、戦車が運び込まれている。それもこれも北朝鮮の核爆弾は、日本向けというより、いつでも中国に向けられる懼れがあるからだ。

 中国はロシアの北への急接近を過剰には評価しておらず、その経済的破綻情況を根本から立て直すほどの意気込みも資金もロシアにはないと踏んでいる。むしろ、この平壌のモスクワ異常接近は、金正恩の危険な綱渡りだと認識している。「ロシアはルーブル下落やインフラ建設能力の問題があり、北朝鮮へおおきなプロジェクトを運べない」というアキレス腱があるからだ。

 そして北京は北朝鮮の外相の訪問を受け入れても、数時間もまたせたうえ、いままで経験したこともない冷遇で対応した。このことに象徴されるように習近平の絶対的要求は北朝鮮の核開発凍結である。

 とはいうものの北京も九月三日に予定している「抗日戦争勝利軍事パレード」には、プーチン大統領の出席に加えて、金正恩の出席を望んでおり、最近、中国外交部は駐平壌大使を外交官僚の重鎮と交替させた。そのうえで食料援助をカードに再接近を試みているフシがある。
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 ◆書評 ◇しょひょう ▼ブックレビュー ◎BOOKREVIEW◆ 
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 日本はなぜソ連抑留という酷い人権侵害に遭遇したのか
  これはソ連の国家犯罪であり、改めて糾弾しておかなければならない

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長勢了治『シベリア抑留  日本人はどんな目に遭ったのか』(新潮選書)
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 ソ連の記録では日本人の抑留60万、死亡6万人になっている。
杜撰な数字は、まったく数学の出来ないロシア人らしく出鱈目だが、著者は様々な資料を付き合わせて照合し、計算しなおして、全体の拉致、抑留された日本人は70万人、死亡10万人と推定している。
 「抑留」とは名ばかりで、実際は拉致であり、シベリアでの飢え、極寒、重労働の三重苦にもがき苦しみ、最後の抑留者が帰国するまでに十一年を要した。つれていかれた先はシベリア、ロシア極東のみならず、ウクライナ、カザフスタン、モンゴル、ウズベキスタン。。。。。。
 本書はそのうえ、具体的な抑留地図、収容所別人数などを網羅しており、これ一冊でソ連抑留問題のすべてが分かる。浩瀚450ページ、筆者執念の書き下ろし作品である。
 しかも「ソ連では抑留者に積極的に思想教育を行った。これは共産主義独特のもので、フィリピンなど南方に抑留された捕虜にはなかったものだ。捕虜に共産主義思想を吹き込み、共産主義戦士として祖国日本に送り帰すことが目的だった」
のだ。
 「ソ連は捕虜を移送する前に1000名づつの『建設大隊』を編成させた」。
その目的は「将官や上級将校を分離し、旧軍組織を解体することで日本兵の団結や抵抗を防ぐためだ。ヨーロッパ伝統の巧妙な『分離支配』である」。
 それゆえ後日、正確な人員の把握と名簿の整理が出来ないこととなった。
 そして、もう一つ特筆しておくべきはソ連が育成訓練した「スパイ」である。
 「ソ連のスパイとしては、収容所内の情報収集を目的とする所内スパイ(密告者)、と帰国後、日本の情報を通報する対日スパイのふたつがあった。スパイを徴募し、養成し、利用したのが秘密警察のチェキスト、オペルである」。
 かくて戦後も長い間、日本の悲劇は続いたのである。

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 読者の声 どくしゃのこえ READERS‘ OPINIONS 読者之声
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(読者の声1)私は昨日の(読者の声4)欄で『コールダーウオー』に「アメリカはドルの金本位制を1971年に廃棄し、サウジの王政を護ることを条件に石油をドルにてのみ取引できる体制、つまりペトロ本位制に移行させ、アメリカは石油を不換紙幣を刷るだけで輸入できる体制を作り上げた」と書かれていることは誤りではないかと申しましたが、ドルが基軸通貨たる大きな要因が、石油と連結していることにもあることを否定するものではありません。
基軸通貨たる要件は、皆が自分にとってそれが価値ある物・サービスで在ると認識したものを如何に多く提供できるかであり、それをアメリカが出来てきたからこそ基軸通貨になれたのだとおもいます。
中国元がハードカレンシーや基軸通貨になろうとしても、彼らが世界が求めている価値をさらに提供できなければそれは無理ではないかとおもいます。
アメリカの場合は(それが一方的で怪しげなモノであっても)軍事力さえもが世界の秩序維持をもたらす価値を保持していますので、それを王政維持サービスの”代金“としてサウジは石油を支払ったのです。
しかし中国の軍事力を”購入“する国は限られています。つまり中国の軍事力はほとんどの国にとって害こそなれ”購入“価値がないからです。宮崎先生の御著書『日本が在日米軍を買収し、第七艦隊を吸収・合併する日』(ビジネス社)も同様の文脈にあるのではないでしょうか。
さらにアメリカは情報通信・金融・資源エネルギーの3分野で圧倒的な力を持ち、これで生み出す莫大な価値を世界に提供しているがゆえ、他国はその価値を手に入れたいがためにドルを持ちたがり、基軸通貨たりえるのです。
中国は市場経済を導入し、それまで世界経済の中では無価値であった巨大な土地や多くの人口(「巨大市場」と銘打った価値)を、あたかも永続的で巨大な価値があるがごとく世界に提供する方策を取り、それを「販売」することで急速な経済成長をもたらしました。
しかし最近の中国はその価値を喰いつぶしてしまったようですし、世界経済体制下での中国市場という「市場価値」も減耗してきたのです。
今後、本当に世界がほしがる価値を提供できるモノやサービスを中国が「生産」できぬ限り、AIIBを造ってもハードカレンシー化は限定的でしょうし、基軸通貨への道は遥か遠いような気がいたします。
   (千葉市在住 足立誠郎)



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(読者の声2)国防を語らずして、日本を語るなかれ! 【第24回 軍事評論家・佐藤守の国防講座】のご案内
―終戦70周年企画― 大東亜戦争、いわゆる“太平洋戦争”の真相はこうだ!

 「先の戦争」終戦から今年は70周年を迎えます。昭和16年12月12日、日本政府は閣議決定に基づき、「今次の対米英戦は、支那事変をも含め大東亜戦争と呼称す。大東亜戦争と呼称するは、大東亜新秩序建設を目的とする戦争なることを意味するものにして、戦争地域を主として大東亜のみに限定する意味にあらず」と発表しました。
しかし昭和20年、連合国軍総司令部(GHQ)は、日本占領後すぐにこの戦争目的をもみ消すため、あらゆる出版物を事前検閲して「大東亜戦争」をすべて「太平洋戦争」に書き換えさせ、公文書での「大東亜戦争」の使用を禁止し、さらにはGHQ民間情報教育局が作成した「太平洋戦争史」を朝日新聞などに連載させるとともに、「真相はこうだ」というプロパガンダ番組をNHKラジオで流させることで、多くの日本人に軍国主義・日本は侵略的で残虐で劣弱な国であり、アメリカこそが強く正しく賢明な国なのだと信じ込ませたのでした。
 今回の国防講座では、こうした「太平洋戦争史観」では知ることのできない「大東亜戦争の真相」について、開戦と終戦の二部構成で解説いたします。
           記
日 時:7月18日(土) 12:30開場、13:00開演(15:30終了予定)
場 所: 靖国会館 2階 偕行の間
参加費:1,000円(会員は500円、高校生以下無料)
予定  第1部 開戦の真相はこうだ!
演 題:「なぜ日米開戦は回避できなかったのか?」
講 師:佐藤 守(軍事評論家、元南西航空混成団司令・空将)
    第2部 終戦の真相はこうだ!
演 題:「日本陸軍の本土決戦構想と対米終戦戦略」
講 師:家村和幸(日本兵法研究会会長、元陸自戦術教官、予備二等陸佐)
お申込:MAIL info@heiho-ken.sakura.ne.jp
FAX 03-3389-6278
件名「国防講座」にてご連絡ください。なお事前申込みがなくても当日受付けます。
   (日本兵法研究会 会長・家村和幸)



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(読者の声3)「正論を聞く会」から宮崎正弘氏独演会のお知らせです。きたる6月16日、宮崎先生の独演会が千代田区大手町の「産経プラザ」において開催されますので、是非、ご参加下さい。どなたでも参加できます。予約の必要はありません(ただし満員の節は入場をお断りすることがあります)
記
とき     6月16日 1830~2030
ところ    サンケイ・プラザ 三階会議室
       http://www.s-plaza.com/access/index.html
       (大手町「産経新聞ビル」)
参加費    おひとり1500円(学生千円)
講師     宮?正弘氏
演題     「中国経済崩壊のカウント・ダウン」
お問い合わせ (03)3407-0637(三輪)
参考     『正論』7月号の342p広告を御参照下さい。



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(読者の声4)貴著『アジアインフラ投資銀行の凄惨な末路』(PHP)を読了しました。まったく日頃から小生も考えていた通りの分析を、速筆と抜群の推察力で、電光石火の如く仕上げる、そのダイナミックな取材力には呆れるばかりです。
 AIIBの分析、その末路には安堵さえ覚えつつ、それにしても人口が多いとはいえ、中国の勢いがこのまま止まらないということは常識では考えられないでしょう。こうした文脈からも、この本は近未来を見透かすように予測しており、もっと広く読まれるべきと思います。
   (TI生、相模原)
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宮?正弘 v 石平『2015年 中国の真実』(ワック、シリーズ第五弾)
 宮崎正弘 v 西部遇『日米安保五十年』(海竜社)
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