火曜日, 4月 21, 2015

崎正弘の国際ニュース・早読み    (フィリピン、ベトナムと「戦略的パートナー」を締結へ)

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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 
平成27年(2015)4月21日(火曜日)
   通算第4521号  
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 「中国はフィリピンから出て行け」、マニラでも反中抗議行動
   アキノ大統領、ベトナムと中国に共同で対抗する条約締結を考慮
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 『サウスチャイナ・モーニングポスト』が報じた(4月20日)。
 ベトナムとフィリピンが「新しい戦略的パートナーシップ」を締結する準備にあると。

これはアキノ大統領がサウスチャイナ・モーニングポスト紙との独占インタビューの中で明確に語ったことで、同紙にアキノ大統領は嘗て『防衛力強化のために日本が憲法改正に踏み切ることに賛成である』とした。
 
 「中国が南シナ海で展開している海賊行為はヒトラーと同じでありながら、世界が等閑視しているのは危機がさらに深化していることを意味する」とアキノ比大統領はサウスチャイナ・モーニングポストのインタビューで真情を吐露した。

 マニラが「戦略的パートナー」としているのは米国と日本。ベトナムとは頻繁に南シナ海での中国の行為に関しての話し合いをもっているが、条約締結には至っていない。

 だが「フィリピンの国益を守るのが大統領の職務であり、民衆の声に耳を傾けるのが大統領のつとめである。米国とは昨年四月に新しい防衛条約に署名したが、どの条項にも明らかに敵対する対象を名指ししてはいない。ベトナムとの新協定も、いかにしてお互いが国益を守るかという点で、いかに協力できるかを検討するのが重要だろう」
この大統領会見は二時間にもおよび、ロザリオ外相が同席した。

 アキノ大統領は最後に付け加えた。
 「中国の行為について国際機関に提訴しているが、調停を依頼しているわけでもなければ、この機関にはそうした能力が備わっていないことくらいは認識している。しかし中国が国際機関への提訴を無視している事実は、ほかの諸国への悪い反応としてはねかえっている」。

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 ◆書評 ◇しょひょう ▼ブックレビュー ◎BOOKREVIEW◆ 
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 中国のもっとも重要な伝統は科挙を産んだ宗族制度だった
  宗廟も廃墟となる懼れ、人々は本気で宗教心をすてた。ならば行き着く先は?

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石平『中国人はなぜ「お金」しか信じないのか』(KKベストセラーズ)
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 いきなり文化的本質論の議論となる。
 石平氏は本書のなかで、まずこう言う。
 「王朝の交代、血で血をあらう動乱を何度も繰り返してきた中国には、真の意味での『国家』は存在しなかった。そんな中国において数千年間、人々の思考、行動原理を支えてきたのが、『家族中心主義』であり、『宗族社会』だった」
 典型は中国版「平家物語」で落ち武者たちは福建省と広東省の境にある山奧へ流れ着き、地付きの人からは「客家」とよばれた。
楕円形の巨大な土楼を築き、中庭に田畑を耕し、山羊や豚を飼った。家族は宗族を単位にまとまって自給自足の暮らしを続けた。
 評者(宮崎)は、福州から夜汽車にのって龍岩というへんぴなところへ行き、タクシーを雇って土楼群を見に行ったことがあるが、いまやすっかり観光地(世界遺産)、入場料金が3000円ほど徴収される。
客家ほどではなくとも、一族が集団で暮らし、墓地を同じ場所とする。これが「宗廟」である。
宗族制度とは、一族の中に優秀な子どもがいれば、皆で金を出し合って学校へ送り出し、科挙の試験をうけさせ、一族の名誉とした。科挙選抜の原動力となり、科挙を引退すると「郷神」とよばれ、その土地の統治者でもあった。
こうした中国古来の伝統が崩れた。
 破壊したのは毛沢東の共産主義で「革命」と称して、農村へ行くと地主と郷神を人民裁判にかけて処刑した。これで農村に知識人は不在となった。
家族主義を壊したのは密告制度だった。
 改革開放以後は「お金」が宗教となる。ゾロアスター教は拝火教とも呼ばれ、ペルシア、アゼルバイジャン、インドの奥地にいまも残る。イランにはヤスドという街に、まだ火の消えない神殿がある。この土着的な宗教の上に、イスラム教が流れ込んで、イランはシーア派となり、インドも世俗イスラムとはやや趣がことなるイスラム、それは日本にしても土着の自然信仰の伝統が築かれたあとに仏教が入ってきた。オリジナルの仏教と日本のそれは大きく異なり、原理原点的な仏教は大英博物館にある。
 仏教発祥の地はインドだが、いまのインドには影も形も残っていない。
 釈迦のうまれたルンビニはネパールに残るが、イスラム教徒のメッカ巡礼のような、仏教徒が必ず訪れる場所とはなっていない。

 ▼道教はどこへ行ったのか?

 共産革命前まで、中国の伝統的な宗教は儒教ではなく道教である。道教が尊んだ価値は家族第一主義、よそ者は信じないが血縁で結ばれた、血の絆は固く、だからこそ宗族による宗族だけの宗家信仰が蔓延していた。この伝統が墓地の設計思想に受けつがれ、宗族がまとめて祀られる宗廟があちこちに出来る。
 広州市のど真ん中にある「陳家書院」は有名な観光地だが、あれは陳一族の宗廟である。この宗廟が常識とされ、華南ではどこにでもあった。
 広州の南、番寓にはいまも「留耕堂」という有名な宗廟があるが、タクシーを雇って行ってみると、建物だけのこり、清の時代の戦争の英雄だった韓氏(のちに何氏と改名)の宗廟としての機能は失われていた。ちょっと評者はショックを受け、そのことで石さんと話し合ったことがある。

雲南省の山奥、ミャンマーとの国境付近の集落にも十数もの宗廟があった。
 数年前、広州市郊外の開平市から江門市にかけての郊外(市内からバスで一時間)、赤土欠(チーカン)村を訪ねたことがある(「土」と「欠」で一文字、カンと発音)。
西洋の御殿のような白亜のお屋敷がごろごろと建った場所で異様な光景を観た。結婚式が洋装で、缶がガラガラ鳴らずリムジンで街を行進する。
この村には苦力貿易で米国へ渡り、成功した故郷に錦をかざった在米華僑が金にあかせて洋館をたてあい、それが文化遺産となって世界の観光客が絶えない所だが、ここでも宗廟をまつる習慣が失われていた。

 『宗族』は家族主義、親戚尊重という血のコネクションが希釈化し、『宗廟』への信仰心が薄れた、最大の理由が共産革命による伝導破壊、家族制度は密告のよって破壊され、つぎに宗廟への価値喪失は海外華僑の三世、四世、五世がアメリカ的価値観を身につけ、中国語をまったく喋ろうともせず、中国を汚いと観ていることにより宗族の絆が完全に壊されたからなのである。
 
そして宗族信仰がこわれ、何も文化的歴史的伝統が残らない中国で新しい宗教とは、他人も家族も信じない、強いて信仰の対象があるとすれば、カネになった。
銅銭の巨大なオブジェが中国の津々浦々の地方都市へ行くと歩行者天国に飾られ、シンガポールのチャイナタウンへ行くと世界最古の石銭が飾られている。世界どこでも、中国人の信仰の対象が何であるかをしることができる。
拝金主義の中国は人間がさもしくなり、その精神は枯れ、寂寥たる曠野となって、この行き着く先は世界の破壊であろうか。

 ともかく石平さんの新刊を読んで副次的に連想したのは、こうした拝金主義の中国がAIIBを設立するなどと言っても、銀行の基盤は「信用」であり、その見えない価値観をいかにして、かれらは作りだし、その信用のネットワークを構築し、銀行業務を拡大できるのだろうかという疑問に包まれた。
 いろいろと考えさせられる本である。

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読者の声 どくしゃのこえ READERS‘ OPINIONS 読者之声
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(読者の声1)どなたか下記疑問に対して、経済理論の切り口からの考え方を御教授いただければ幸いです。
1.日本の金融財政政策論のすべては、国債の発行が前提になっていると思います。
しかし、元ウクライナ大使の馬渕睦夫氏が書かれた「国難の正体」(ビジネス社)および「世界を操る支配者の正体」(講談社)では「アメリカでは、政府が国債を発行し中央銀行から通貨を受け取る方法では、公的債務が生じるので、政府が直接 法定通貨を発行することで公的債務を背負わないで済む方法が、リンカーン・ケネディー時代に採用されたことがある。そして両大統領は暗殺された。」と書かれています。今の日本は増え続ける巨額な公的債務が経済政策の最大の足かせになっていると思いますが、それではなぜ日本は法的通貨を政府が発行する形式をとらないのでしょうか?
2.日本政府が仮に複式簿記を導入しているとすると、国債を発行した場合、貸方は国債、借方は現金となりましょう。
一方法定通貨の場合は貸方は日本国の「資本金(国富?)」借方は現金となるのでしょうか?

3.しかし通貨を印刷することで、いきなり“資本金”が増えるのもおかしいような気がします。そこで私は通貨とは価値を持っているのではなく、単に価値を移動させる際にかならず必要な運搬道具、つまり価値を乗せる“お盆”のようなものだと考えてみました。
こう考えると簿記上は法定通貨を発行するときは、借方も貸方もゼロであり、強いて記載するとしたら、お盆をつかう際に支払いが必要なお盆の使用の為のリース料、換言すれば金利と、お盆の制作コストだとおもいますが、この考え方は正しいでしょうか?
  (千葉市在住 足立誠郎)



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(読者の声2)「中共の狙いと日本の対応」    
(1)中共の裏の狙い: 今、アジア開発銀行構想など中共の攻撃的な世界政策が続いている。しかし彼らは戦略に長けているので、表面的な事件だけに目を奪われず、裏で進行している政策にも注意することが必要だ。中共の軍師、孫子は二千年以上前に「戦争とは欺すことなり」と喝破している。
(2)中共の中南米政策:私が注目しているのは、中共の中南米政策だ。その狙いは何か。それは中南米を反米化し、米国の目をアジアから中南米にそらすことではないか。そして守るもののないアジアを侵略支配する。スターリンの朝鮮戦争の狙いは米国の目を欧州からアジアにそらすためであったという。これは見事に成功した。ただし黒幕スターリン自身が予想外の脳溢血で死んでしまったが。
 今回の米国のキューバとの国交開設の動機も実は中共の攻勢でキューバ危機の二の舞をおそれたことが本音ではないか。オバマには核戦争でソ連を威嚇したケネディーのまねは出来ない。核拡散と兵器の進歩で米国の相対的な武力は明らかに低下しているからだ。
(3)日米安保の限界; 日本のマスコミは日米同盟強化を主張している。しかし核拡散の時代、いくら日米友好でも米国は日本の代わりに核被爆を受けられない。という事は日米安保はすでに無効なのだ。これを知って北朝鮮は日本の子供を誘拐し、中共は尖閣を侵略している。ロシアは核の先制使用を公言し、広島市長の抗議を一蹴している。
(4)日本核自衛と効果: そこで日本の対応であるが米国に国防を依存できない以上核自衛以外にない。日本の核自衛は地政学的に、印度と中共を挟撃する。また欧州とロシアを挟撃する体制を作るので中露の乱暴な動きを牽制することができる。
米国は日本の核自衛により、アジアに対して前哨基地が出来るので、直接核大国と対峙しないで済むから安心だ。世界は激変している。アジアでは日本の非核が平和どころか地域のバランスを崩し不安定化を進めている。
核の持つ非対称性の威力は、中共やロシアのような古典的な大国を単なる普通の人口の多い貧しい国に変えてしまうから、日本の核自衛は欧州やアジアの国際関係を安定させるために大いに役立つだろう。そこで是非安倍首相には日本の核自衛を含め新しい世界安定化戦略をオバマら米国首脳に提案して欲しい。
(東海子)



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(読者の声3)来る28日に「主権回復国民のつどい」が開催されるとしりました。これは誰でも参加できるのでしょうか?
   (一愛読者)


(宮崎正弘のコメント)小誌でも告示しましたが、どなたでも参加出来ます。入場無料です。小生も登壇予定です。
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