水曜日, 4月 08, 2015

崎正弘の国際ニュース・早読み (中国経済は予想より深刻に悪化している)

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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 
平成27年(2015)4月8日(水曜日)
   通算第4511号  (前日発行)
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 人民元高が逆に中国経済のとどめを刺しかねない
  輸出低迷から壊滅、失業膨張、新卒の就労先は激減
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  中国経済の近未来展望はますます暗くなった。
 アジアインフラ投資銀行などと他国の面倒をみる余裕をなくすのは時間の問題ではないのか。

   理由を七つ列挙してみる。
 第一は通貨為替レートによる通貨戦争で、中国は負けが込んできたという意外な事実だ。
 通貨戦争という視点に立てば、中国人民元は三年前の日本円の立ち位置である。
 列強が通貨安競争を演じているときに日本だけがQEを実行しなかったため円高が続き、
日本企業は陸続と海外へ工場を移転させて国内景気を悪化さえ、失業者を増やした。白川日銀総裁は判断を間違えていたと批判が凄まじくあった。

 いま、米ドル高に引きつられて人民元も独歩高。1人民元は12円から、いまや20円。だから日本に旅行に来ても中国人が割安感を感じるという奇妙な景観も出現したのだ。
 しかし元高は同時に輸出競争力を失う。
 これにより外国企業は採算が合わなくなって「チャイナプラスワン」をスローガンに中国から撤退する。

 ますます中国は不況となり、失業が増える。2015年大学新卒は748万人、このうち150万人がいまだに就労先がない。北京の友人に聞くと、何のコネもない日本企業にも親が飛び込みで「息子を雇ってくれまいか」と聞きに来るそうな。

 国家統計局の発表する「失業率」は3-4%台である。これほどの出鱈目はない。農村から都会へ流れ込んだ流民は数千万人とされるが、みごとに失業統計に反映されていないのだ。
 
 第二に地方政府の債務が膨張してきたが、いっこうに解決のメドが立っていない。そればかりか、地方政府の一部に地方債権の起債を許可する有様である。地方債務の合計は320兆円、たぶん半分が不良債権かするだろう。
 くわえてシャドーバンキングならびに理財商品の償還期を迎えており、中国の債務総額はGDPの282%で、日本より悪いのだ。

 
 ▼中国国内の銀行が経営状態が悪化しているのに?
 
 第三に銀行の機構的再編の遅れ、機能不全、銀行倒産という悲惨な状態が出現した。銀行取り騒ぎが起きないのは「国家総動員法」により軍が出動できるからだ。
中国国内の銀行が経営状態が悪化しているにもかかわらず、対外的にAIIB設立してカネを貸しますとうのは整合性のある話ではない。

 第四に不動産バブルの破裂がいまや誰の目にも明らか、中国語の新聞は連日、こちらの深刻さを取り上げている。
  「庶民の夢」だったマンション購入は高嶺の花となり、もはや手が出ないというのに、他方でも豪華マンションが林立し、しかも誰も住まないゴーストタウン(鬼城)化している矛盾、これこそが一党独裁の社会主義国家が唱える「社会主義的市場経済」のなれの果てなのだが、その惨状を素直に直視できない(不忍直視)、夜は漆黒の闇と化け(夜晩黒漆漆)、これまでGDPの48%が投資、とくに12&が不動産といわれたのだが、その高度成長の牽引車が壊滅状態にある。
 
 第五に富の偏在、技術の偏在、沿岸部への工業変調による人口動態に異様な動きが出ていることである。
 英BBC中国語サイト(4月4日)に拠れば、 中国の資産5億元(約100億円)以上の富裕層はおよそ1万7000人いる。総資産額は31兆元(約620兆円)。この数字は中国の国内総生産(GDP)63兆6500億元(約1273兆円)の半分に相当する。
 民生銀行と胡潤研究院が発表した「2014~2015年中国超富裕層の需要調査研究報告書」に従うと、中国の超富裕層の84%は男性で、平均年齢は51歳である。
 地域別では北京市、広東省、上海市、浙江省に集中し、所有する企業は製造業が全体の25%近くを占め、次いで不動産業、TMT(科学技術、メディア、通信産業)、サービス業、投資、重工業、製薬業、エネルギーの順番という。
 しかし超富裕層は汚職や横領の代名詞でもあり、「大富豪ランキング」に登場したとたんに逮捕され、死刑になった富豪もいる。大富豪ランキングは「死のランキング」とも呼ばれている。
 

 ▼庶民は社会福祉、生活保護、医療保険とまったく無縁である

 第六にこれほどの金満国家となっているのに社会福祉、生活保護、医療制度は問題だらけ、特権階級のみが社会福祉制度の恩恵にもあずかれるが庶民は蚊帳の外である。
 したがって民衆の党幹部への恨みは深く、こうした所得格差をすこしでも少なくしない限り、庶民、農民の一揆、暴力的抗議運動が納まることはないだろう。

  第七に根絶できない腐敗の問題である。
 習近平が贅沢を禁止したため、ホテルやレストラン、豪華リゾートなど客足が途絶えた。有名レストランでも従業員の給与が支払えず休店に追い込まれ、豪華ホテルでも首切りが横行しはじめた。有名ブランド品も売れ行きはばったりと止まり、撤退か店舗縮小に踏み切ったところもでてきた。

 習近平の「虎も蠅も」という反腐敗キャンペーンは、かなりの大物を血祭りに上げ、庶民の拍手喝采をあびたものの、本物の「大虎」は野放しであり、結局の所、江沢民、李鵬、曽慶紅などを逮捕しないと、庶民の不満は収まらないだろう。

 それでなくともPPIは連続35ヶ月も下落しており、「住宅ローンを組んだ人の99%は破産するだろう」と預言して香港の著名エコノミストの朗喊平は「いかなる政策を断続的に維持し、かろうじて低成長を持続させることは不可能である」とし、市場の改革とは政治改革がなければ実現しない。習近平の唱える「新常態」は新しい南巡講話でとして機能しなければ意味がない」と獅子吼している。

 庶民レベルの経済感覚と見通しを聞いても、希望に満ちた明るい展望がきかれることはなくなった。

 こうした惨状の中国へ周回遅れで投資を拡大するドイツって、やっぱり神経がおかしいか、別の思惑が動機であろう。
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 ◆書評 ◇しょひょう ▼ブックレビュー ◎BOOKREVIEW◆ 
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 外交方針、戦略に警告を発し続けた岡崎久彦氏の遺言集
  日本の戦略不在がこれからの安全保障に何をもたらすのか

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岡崎久彦「国際情勢判断半世紀」(育鵬社)
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 本書は昨秋亡くなった岡崎久彦元サウジアラビア大使(外交評論家)の遺稿集とも言える書籍で安倍晋三首相の追悼文が巻頭を飾っている。
歴代政権の外交のご意見番でもあったが、外交シンクタンク岡崎研究所を十年以上、主宰された。
 余生は国際情勢の分析にかけると言われ、おりおりに録音したテープをおこして新しく編纂されたのが本書である。
 ときおりのシンポジウムの他、年に二回ほど開催されたパーティ(飲み会)では冒頭に三十分ほど岡崎氏が情勢分析をされ、その講話が済んで、乾杯がおわるや会場を去る人も多かった。
どういう分析をされるか、それだけを外務省、防衛庁関係者、商社マンらが聞きに来るのだ。
 重要部分はいくつかあるが、中国の軍事力の脅威について「技術の進歩」をとりわけ問題視されている箇所が目を引いた。
 まだまだ軍事力は米国優位といわれるが、日米同盟に安穏としている日本への警鐘でもある。
 中国が「長距離ミサイルの性能を向上させて、GPSを使って、西太平洋の米空母機動部隊を宇宙からピンポイント攻撃できるようになれば、状況は一挙に変わる。いずれにしても技術革新将来を正確に見通すことは困難であり、いつそうなるかわからない」
 だから米国は中国に強硬な姿勢をとらなくなったのだ。
 となれば、「2016年の台湾総統選挙において、1996年のような米機動部隊の威圧が可能かどうか、もうわからなくなっている」
という具体的状況がすでに出現している。
 いそぐべきは日本の外交戦略、軍事戦略の立案であると岡崎氏は遺言された。

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(休刊予告)小誌は海外取材旅行のため4月9日―13日が休刊となります
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 読者の声 どくしゃのこえ READERS‘ OPINIONS 読者之声
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(読者の声1)三島由紀夫研究会の公開講座のご案内です。
 4月24日高井三郎氏を講師に迎えて国防講座を開催します
  いま国家にとってインテリジェンス(情報)の重要性が論議されています。元陸上自衛隊幹部学校教官の高井三郎氏(たかいみつお、退役一等陸佐)を迎えて国防講座を開催しますのでご参加ください。
         記
1)日時   平成27年4月24日(金)18時半より(18時開場)
2)場所   ホテルサンルート高田馬場(JR、東西線、西武線「高田馬場」下車)
3)講師   高井三郎(たかいみつお、元陸自幹部学校教官、退役一等陸佐)
4)演題   戦後軍事情報史と情報機関(仮題)
5)会費   一般2千円(当会会員1千円)
終了後講師を囲んで懇親会を予定しています。(会費お一人3千円)
 
 次に五月の講座です。
 5月公開講座の講師は西村幸祐氏です。
 5月の公開講座は西村幸祐氏(評論家)にお願いすることとなりました。要領は下記の通りです。
       記
1)日時  平成27年5月29日(金)18時半~ (18時開場)
2)場所  アルカディア市ヶ谷(私学会館)
3)講師  西村幸祐氏(評論家)
4)演題  戦後70年と三島死後45年―ダーザイン〈現存在〉としての三島由紀夫
西村幸祐氏の新著
『21世紀の「脱亜論」―中国・韓国との訣別』(祥伝社新書)
http://www.amazon.co.jp/dp/4396113986/
         
夏が過ぎあきになります。9月の公開講座も新保祐司氏に決まりました!
 都留文科大学副学長・教授の新保祐司氏(文芸評論家)に下記の通り講演を行って頂くことになりました。ご期待ください。
  記
1)日時: 平成27年9月18日(金)18時半~(18時開場)
2)開場: アルカディア市ヶ谷(私学会館)
3)講師: 新保祐司氏(文芸評論家、都留文科大学副学長・教授)
4)演題: 神武東征と交声曲「海道東征」の復活
追記 すでに新保祐司氏は国民歌「海ゆかば」の作曲者である信時潔の評伝を書かれていますが、信時潔が昭和15年に紀元2600年を奉祝するために作曲したオラトリオ(交声曲)「海道東征」は傑作の評判も高いのです。ところが戦後は顧みられることがなく、ようやく故黛敏郎先生が再評価を行い、そしてこれまでに2度ほど完全演奏が行われたことがありますが、今秋11月には新保氏のご協力で大阪で復活演奏が行われる運びとなりました。正に神話と現代音楽が一体となったこの傑作とそれを生み出した信時潔についてCD演奏も含めて熱く語って頂きます。

 十月は田中英道先生(東北大学名誉教授)をお迎えします。
          記
1)日時  10月21日(水)18:30~(18:00開場)
2)会場  アルカディア市ヶ谷(私学会館)
3)講師  田中英道(東北大学名誉教授)
4)演題  三島由紀夫と「美」

  いずれも予約なしで、どなたでも参加できます。会費2000円(三島研究会会員は千円です)。
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(休刊予告)小誌は海外取材旅行のため4月9日―13日が休刊となります
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 宮崎正弘の新刊  宮崎正弘の新刊 宮崎正弘の新刊   
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『「中国の時代」は終わった』(海竜社、定価1080円) 
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『中国バブル崩壊が始まった』(海竜社、1080円)
『中国 大嘘つき国家の犯罪』(文芸社文庫、713円)
 『中国の反日で日本は良くなる』(徳間文庫、680円)
 『世界から嫌われる中国と韓国。感謝される日本』(徳間書店、1026円)

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<宮崎正弘の対談シリーズ>
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宮崎正弘 v 小川榮太郎『保守の原点』(海竜社。1620円)
宮崎正弘 v 大竹慎一『中国崩壊で日本はこうなる』(1512円。徳間書店)
宮崎正弘 v 室谷克実『仲良く自滅する中国と韓国』(徳間書店)
宮崎正弘 v 川口マーン惠美『なぜ中国人とドイツ人は馬が合うのか?』(ワック)
宮崎正弘 v 石平『2015年 中国の真実―中国は習近平に潰される』(ワック)
宮崎正弘 v 西部遇『日米安保五十年』(海竜社)
宮崎正弘 v 佐藤優『猛毒国家に囲まれた日本』(海竜社)
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宮崎正弘のホームページ http://miyazaki.xii.jp/
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(C)有限会社宮崎正弘事務所 2015 ◎転送自由。転載の場合、出典を明示
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