水曜日, 5月 20, 2015

宮崎正弘の国際ニュース・早読み (習近平は経済政策でも主導権を李首相からもぎ取る腹づもり)

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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 
平成27年(2015)5月20日(水曜日)
   通算第4545号 
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 中国の新経済政策「海と陸のシルクロード」は、中味より習近平の人事
  どうやら李克強首相から経済政策の主導権を取り上げるつもりらしい
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 中国の矢継ぎ早やな新経済政策は、あきらかに党主導に移り、従来、経済政策立案、実践の責任を負った国務院から主導権をもぎとったかたちに変化している。
 つまり改革開放路線の根幹にあった自由競争、市場経済、規制緩和とは逆の方向へ習近平は舵取りをかえ、中央集権的な「計画経済」への復帰が濃厚なのである。

 「マクロ経済の調整と経済コントロール」が党主導へ復帰する。
 この路線修正の中軸は習近平の考え方が強く反映されており、つぎつぎとつくられた経済政策専門委員会には改革志向の強い団派が少数派となっている。

 顕著な変化は「一帯一路」にまつわる多くのプロジェクトの中味である。
 私企業の軽視、市場経済度外視。そして国有企業の参画、そのプロジェクトと予算配分の全容を見れば、国務院のすすめる産業再編という大きな方向性が軽視され、もうひとつ重大なことは国務院が進めてきた「規制緩和」は無言の裡に無視され、むしろ党主導で「規制強化」の方向にむかっていることである。

 「自由競争」ではなく、「国有企業の強化」が、習近平の「一帯一路」プロジェクトの内容に濃厚に現れた。
たとえば国有企業大手のCSCEC(「建設技術協力公司」)は、過去、116ヶ国で6000件のプロジェクトを担当してきた。おなじく国有大手のCCCCL(「通信建設公司」)は各地のハイウェイ、橋梁、商業港などを建設した。
 CAMSE(中国エンジニア集団)は露西亜、アフリカ、東欧諸国でのプロジェクトを担当してきた。この三つの国有企業建設集団は、「一帯一路」の発表に平行して株価が高騰している(ジェイムズタウン財団発行「チャイナブリーフ」、15年5月15日)。


 ▼地方政府にも露骨な格差

 付随して通信大手のフアウエイ(華為技術)とZTE(中興通訊)も、プロジェクトに付随する通信施設、機器類の入札を有利に進め、殆どを生産することになる。

 もっと驚くことに「一帯一路」の責任者は李克強首相ではなく、政治局常務委員の張高麗がトップとなって、この人事ではじめて習近平の露骨な狙いが判明した。
 張高麗は江沢民の腰巾着、露骨なごますりで出世した政治家である。

 また中国各地の地方政府にとっても、この一帯一路で潤うのは新彊ウィグル自治区と福建省であることが浮き彫りとなった。地方政府のコントロールにも、一帯一路プロジェクトが政治的利用され、習近平政権への収斂がなされている。
 新彊ウイグル自治区や福建省が、一帯一路の輸送拠点となるからだ。

 他方、置いてきぼりの地方政府の筆頭は江蘇省で、ついで煙台、青島、威海衛などの良好をかかえる山東省、山岳のチベット自治区なども、恩恵にあずかれそうにない。また置いてきぼりになる懼れが強いのは東北三省(遼寧省、吉林省、黒竜江省)である。
 遼寧省は大連が国際貿易港としても機能しており、黒竜江省はロシアとの鉄道、パイプライン並びに木材のトラック輸送のアクセスとして繁栄しているが、とりわけ吉林省が取り残される。

吉林省の東端にある王軍春(ホウチュン)にはロシア国境に工業団地がはやばやと建設され、ロシアのポシェット港とをつなぎ、日本と米国を結ぶ最短ルートとして開発が決定され工事もほぼ終了した。
にもかかわらず実際には本格稼働に至らず、また中国の一帯一路は、日本とアメリカを向いてはいない。
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 読者の声 どくしゃのこえ READERS! OPINIONS 読者之声
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(読者の声1)「在日米軍を買収せよ!」の議論ですが、米国が伝統の艦隊を金で売る筈がないとの指摘があった。しかし米軍は、軍縮の時には海外の基地を閉鎖して当該国に返還し、人員と兵器を削減する。削減された兵士の多くは民間軍事会社に再就職し海外で再び軍務に当たり、削減された兵器は外国に転売される。
 してみれば米軍が日本から撤退する状況になれば、丸ごと日本が買い取る可能性は十分にある。
もちろん現オバマ政権は在日米軍維持の方針だが、米国内では軍縮を求める声は根強くあり、政治状況次第で米軍撤収は有り得るのである。
   (鍛冶俊樹)

 
(宮崎正弘のコメント)予算審議のなりゆきにもよるでしょうね。共和党も、軍拡派は少数派ですし、茶会の一部には在日米軍撤退論者がいます。



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(読者の声2)産経新聞の大きな広告をみて、貴著新刊『日本が在日米軍を買収し、第七艦隊を吸収合併する日』(ビジネス社)を購入し、通勤電車で読みふけりました。題名は突拍子もなく、しかも大胆で、一部の人はあっけにとられるのではないかと危惧されますが、読んでみると、理性的に淡々と米軍の力の衰退と中国の急激な軍拡を対比され、合理的な日本防衛の選択は、先生の説かれるようなシナリオに収斂される可能性が日々高まったと推測されます。
 いずれにしても、本書はもっと大きな議論に発展する起爆剤ではありませんか?
   (BT生、浜松)

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宮崎正弘のホームページ http://miyazaki.xii.jp/
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(C)有限会社宮崎正弘事務所 2015 ◎転送自由。転載の場合、出典を明示
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