金曜日, 5月 29, 2015

宮崎正弘の国際ニュース・早読み (トルコもギリシアもロシアに接近し)

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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 
平成27年(2015)5月29日(金曜日)
   通算第4556号  <前日発行>
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 露土戦争の恨みは恩讐の彼方に
  ロシア、トルコと異常接近。キプロス問題、イスラエルも巻き込むか
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 ロシアはEU向けガスパイプラインのうち、ブルガリア・ルート(「サウザン・ルート」と言われる)の工事を中断し、トルコ経由とすると発表したことはEUに衝撃を与えた。
 これは2007年にイタリアのEMIとガスプロムとのまで合意され、工事は2012年師走に着手されていたプロジェクトで、ロシアは正式にキャンセルしたのだ。

 その代替がトルコルートへの振り替えだった。
ロシアの資源担当大臣はアンカラから、パイプラインの敷設予定地をヘリコプターで視察し、ギリシアまで飛行した。政治的デモンストレーションともなった。

 もとよりバルト海の海底パイプラインはドイツに繋がっている。ウクライナ経由のパイプラインはクリミア併合により欧米の制裁をうけてから、途絶えがちとなり、ウクライナの西半分がEUに加盟し、東半分がロシアと友好関係という分裂国家にでもならない限り、解決しないかも知れない。

 だからロシアはウクライナを日干しにする作戦である。
 トルコルートはギリシアから南欧に輸出される。ギリシアも「ユーロ」問題で、ブラッセルには立腹しており、ドイツの冷淡さにはヒトラー時代の被害を賠償要求するなど、対EUの姿勢が殺気だっている。米国はギリシアに対して、このルートには載るなと圧力をかけたが、ギリシアは受け流している。

 往時は黒海の海底パイプライン工事がすでに250キロ敷設されており、アゼルバイジャンからトルコへ上陸後、ギリシアへ向かう候補地の先帝が今後の作業である。完成すれば年間2500億立方メートルのガスが南欧へ輸出され、通貨地点のトルコ、ギリシアも通過料を受け取って潤うことになる。
 ロシアはこの「南ガス回廊」を「南のシルクロード」と言い始め、四年後に開通すると見通しを語る。

 イスラエル沖合に改底ガス田が見つかったことは既報の通りだが、掘削技術などで開発に協力しているのはロシアである。イスラエルとトルコは軍事協力が緊密だった。
 
 ついで問題となると半世紀近く対立をつづけるトルコとギリシアのキプロス帰属問題である。この島の支配をめぐってトルコとギリシアの話し合いは平行線のママ、ところが、最近キプロス沖合でも海底ガス田が発見され、その現場が南北キプロスにまたがるため、両者の迅速は話し合いが進展するかも知れない見通しとなった。

 じつに世の中は奇々怪々、昨日の友は今日の敵、昨日の敵は、きょうの友。

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 ◆書評 ◇しょひょう ▼ブックレビュー ◎BOOKREVIEW◆ 
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 日本の応援団アメリカ人ふたり、おおいに語る
   リベラルの排他性、米国はナニーステートだ
 
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ケント・ギルバード v テキサス親父『素晴らしい国・日本に告ぐ』(青琳堂)
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 ふたりのアメリカ人が異質の国ニッポンの魅力をとことん語り合った。
 軽快な会話、ぶっ飛びそうになる洒落、ジョークもふんだんに二人は国際政治を日常正確の目線で議論し合う。
 ケント氏とはときどき食事をするが、かれは酒を飲まない。タバコも吸わないモルモン教徒。弁護士として日米を舞台に活躍するかと思えば義侠心に飛んでいて、慰安婦、性奴隷問題でも韓国を批判する発言が多い。
 律儀な法律家らしく、会話はすべて論理的である。そこで一度、三島由紀夫研究会の公開講座に来て貰ったことがある。理由は卒論がミシマだったと聞いたからだ。

一方、テキサス親父なる人物は名前を聞いてはいたが、何をする人か知らなかった。この本で、この人は大変な日本贔屓なうえ、慰安婦像の問題ではグランデール市議会公聴会で証言したり、シーシェパードが暴れる現場へ行って反対したり、行動力もある、日本の応援団長的なアメリカ人であることを知った。
 この二人が日本について縦横無尽に議論したのだから面白くない筈がないだろう。国旗・国歌問題から慰安婦、性奴隷問題をアメリカの立場からみても違和感があるとする二人は日本への忠告やアドバイスも忘れないが、評者はむしろ二人がずばり本質を抉ったアメリカの政治、そのリベラリズムの病理に関する分析に瞠目した。
アメリカの禁煙運動は異常である。個人経営のレストランまで禁煙を強要する国が、はたして自由なのかを疑問を呈するテキサス親父は、こう言う。
「米国ではリベラルのインクレメンタリズム(少しづつ蝕んでゆくこと)が進んで」、飛行機も全部禁煙となり、異常事態である。
 ケント氏は、これを「ナニーステート(過保護な国)」という。ナニーとはフルタイムのベビーシッターみたいなもの」(中略)すべてのことにおいて「こうしなければならない」と国が指示を出すこと」
 また米国政治を蝕んでいるのは「ポリティカルコレクトネス」とテキサス親父が言う。「これは確実に国を間違った方向へ導いてゆく」と。 

ケント「リベラリズムは何でも自由な筈だけど、現在のリベラリズムは保守思想をタブー視していて非常に偏っている」
テキサス「特定の思想を排他的に扱うのは本来の自由主義じゃないよ」
また米国に移住した韓国系は450万人いるが、なぜか彼らは二重国籍でアメリカでも投票権があること。だから韓国系の言い分に媚びるようになびく反日政治家が居ることなど、日本では知らないアメリカの底辺の現実など有益な指摘があった。
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 読者の声 どくしゃのこえ READERS‘ OPINIONS 読者之声
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(読者の声1)貴誌前号、南シナ海の箇所ですが、「軍事専門家は、このファイアリーク島に中国は3000メートルの滑走路を2017年には完成させるだろうと踏んでいる。中国国防部の陽宇軍スポークスマンは、「これは中国国内にハイウェイ、駅舎、飛行場をつくるのと同じことであり、問題はない」と言ってのけた。」
 とあります。
 なるほど、インフラ整備、ということですね。
AIIBで集めた資金は、直接的にはともかく、間接的にはこのような「重要な」インフラ整備にも使われる、ということですね。やれやれ。
  (NS生 千葉)



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(読者の声2)アジアインフラ投資銀行にカナダも日米とともに参加表明をしておりません。
 AIIBについては、英独仏より、ロシアの表向きの参加表明はおくとして、プーチンの本音が気になります。まずはアメリカ、日本の反応をみながら、中国のお手並み拝見で静観しているのでしょうか。
  (SW生、カナダ)

 
(宮?正弘のコメント)プーチンは原油、ガスの資源戦略でペトロダラーというドル基軸体制に挑戦しようとしており、その戦略性の立案過程で、中国をカードに出来ると踏んだのでしょう。所詮、中ロ同盟なる蜜月は、政治的演出色が濃すぎる、演技過剰のジェスチャーとみたほうが分かりやすいと思います。

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宮崎正弘 v 大竹慎一『中国崩壊で日本はこうなる』(1512円。徳間書店)
宮崎正弘 v 室谷克実『仲良く自滅する中国と韓国』(徳間書店)
宮崎正弘 v 川口マーン惠美『なぜ中国人とドイツ人は馬が合うのか?』(ワック)
宮?正弘 v 石平『2015年 中国の真実』(ワック、シリーズ第五弾)
 宮崎正弘 v 西部遇『日米安保五十年』(海竜社)
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