金曜日, 4月 21, 2017

軍事ジャーナル【4月21日号】戦後平和主義の崩壊

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鍛冶俊樹の軍事ジャーナル
第277号(4月21日)
*戦後平和主義の崩壊

 夕刻、居酒屋でテレビ・ニュースを見ながら夕食を摂っていると、隣の卓がどうやら、マスコミの取材らしい。大学名誉教授を雑誌記者がインタビューした後の慰労会と言った所か。丁度ニュース番組で安倍総理が国会で北朝鮮問題について答弁している姿が映し出された。
 それを見た老教授はすかさず「安倍はありもしない脅威を煽っているだけだ。国論をまとめて支持率アップを狙っているんだ。」ところが次のニュースで北朝鮮の宋日昊(ソンイルホ)大使が「戦争になれば日本が最初に被害を被る」との発言にしばし沈黙。
 ややあって「どうもよく分からないな」と呟いて肩をガックリと落とした。私はこの一言に戦後平和主義の破綻を見た。日本国憲法の「日本が戦争を惹き起こさなければ世界は平和だ」とする世界観は物の見事に崩壊したのである。

 さて宋日昊の発言は平壌において日本記者との会見で出たものだが、その席で「残留日本人が住んでいるなら人道的な観点から対応する」と述べた。「拉致問題には関心がない」とも述べているが、どうみても拉致問題への対応を示唆していよう。
 本誌4月5日号の題名は「ファイナル・カウント・ダウン」だが、実はこの題名の記事を書いたのは、初めてではない。週刊エコノミスト(2002年4月2日号)で、同名の記事を書き、米軍による北朝鮮攻撃が間近に迫っている旨を警告した。
 そして同年10月、北朝鮮は拉致された日本人5人を帰した。それまで拉致そのものを認めていなかった北朝鮮の態度の変化に日本中が驚いたが、北朝鮮の意図は明白で、日朝交渉が本格化すれば米軍は対北攻撃を見送らざるを得ないという読みである。
 してみれば、今般の宋日昊の会見の趣旨も同様であり、拉致問題の進展を示唆しつつ日朝交渉を本格化させ、米軍の対北攻撃を見送らせる狙いであろう。

軍事ジャーナリスト 鍛冶俊樹(かじとしき)
1957年広島県生まれ、1983年埼玉大学教養学部卒業後、航空自衛隊に幹部候補生として入隊、主に情報通信関係の将校として11年間勤務。1994年文筆活動に転換、翌年、第1回読売論壇新人賞受賞。2011年、メルマ!ガ オブ ザイヤー受賞。2012年、著書「国防の常識」第7章を抜粋した論文「文化防衛と文明の衝突」が第5回「真の近現代史観」懸賞論文に入賞。
動画配信中:「地政学入門」第1回無料
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上記動画のテキスト本
「領土の常識」(角川新書)
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「戦争の常識」(文春新書)
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「エシュロンと情報戦争」(文春新書、絶版)


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