木曜日, 8月 23, 2012



「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 
   平成24(2012)年8月21日(火曜日)参
        通巻第3731号 
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 薄煕来夫人の谷開来は予想通り執行猶予付き死刑判決。実行犯は懲役9年の軽さ
  ついに権力のトップは「総主流派体制」から「総腐敗派」構造へ
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 安徽省合肥。上海から新幹線が繋がっている。安徽省は胡錦涛の故郷。次期首相と目される李克強の故郷。薄夫人の裁判は犯行現場の重慶からはるかに遠隔地が選ばれた。

 英国人ビジネスマンの殺害容疑で起訴された薄煕来夫人、谷開来の裁判は、この安徽省合肥で行われ、異例の超スピートで判決が出た。
予想通り執行猶予付き死刑判決。実行犯の張暁軍は懲役9年の軽さだった。もとより英国は死刑を希望しておらず、犯罪の具体的中味を知りたがった。裁判では一切、肝腎なことが明らかにされず、薄一族の不正なカネがいかにロンダリングされ、どのような方法で海外へ送られたか。その総額は1000億円程度なのか、もっとあるのか。英国人はどのように絡んだのか?

 裁判は英国人から脅かされての犯行という筋書きで、不正送金などは一切触れず、まさに死人に口なし。そのうえ開被告には手錠もかけられず婦人警官に拘束され、特別扱いもここまでとなると、この裁判はまさに茶番である。

 判決理由はあくまで英国人から脅迫されて、息子の安全が脅かされたこと。薄夫人は精神不安定となり、とても正常な判断が出来なかった。そのご重々反省しているなどの理由がまことしやかに並べられた。米国にいる息子の出廷はなく、これらを裏付ける証人の出廷もなかった。

 実行犯は雇用主の命令だから懲役9年は考えられるにしても、犯行後、事故死を偽装した重慶の警察幹部四人も同時に起訴され、そのうちの責任者には懲役11年とバランスが取れていない。

 そもそも海外への財産移転、不正送金、巨額賄賂の海外での運用は共産党高官全員がやっている。中央委員の85%が子弟親戚兄弟が海外に暮らしており、二重国籍であり、高官一万人が海外へ持ち出した財産は3000億ドル内外と推定されている。
 だから薄夫人の裁判では、この実態が漏れると高官全員の立場がなくなるため、不問に付したのだ。かくて総主流派体制は、総腐敗構造であることを立証した裁判結果となった。
 
 このような腐敗国家が長持ちするだろうか?
       △△ △ △△
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 読者の声 READER‘S OPINIONS どくしゃのこえ 読者之声
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(読者の声1)上海の株式指数が2100を割って年初(26xx台)来、最安値を更新中です。
人民元の最近の安値基調を考えると、円換算、ドル換算では、さらに大幅安です。余り報道されませんが、じわじわと確実に進行しているようです。
1500を割ったら、不動産投機で儲けた金で株式投資をしていた連中に大恐慌が起きて、他の投機対象のアセットにも大きな影響を及ぼしかねません。かれらの多くが1500くらいの時に株式投資を行ったからです。
中国が一気にデフレに向かい世界中から資金回収に向かうか、穀物価格大暴騰を好機に、一気にインフレ政策をとってインフレで価格矛盾をごまかすか、中国政府がどちらの道を取るか、取らざるを得なくなるか見ものです。
ところで、今から二年余り前に近い将来、稲田朋美氏が日本の首相になるであろうと書いたのは、希望的観測でも、私の直感的予測でもありません。
ある日本の政局に大きな影響力を持った勢力が、次期日本の指導者として稲田氏を推すことに決めたとのうわさを聞いたからです。じわじわとその効果が出てきているように思います。
今、表面的に見えるより高い確率で稲田政権実現の可能性があるように思います。
  (ST生、千葉)


(宮崎正弘のコメント)雑誌『正論』のアンケートで、50人ほどの保守系の人々が回答しています。「次の総理は誰がふさわしいか?」。
第一位は石原慎太郎、第二位は安部晋三。そして稲田朋美議員は堂々の三位でした。むろん、小生も稲田さんに票を入れました。



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(読者の声2)貴誌前々号でしたか、中国軍の人事予測のなかで、「常万全は各軍管区参謀長、師団長、作戦部長、国防大學教授、総参謀長を歴任した」とありますが、
常万全は現在「総装備部部長」であり、総参謀長は陳炳徳です。
  (KY生、渋谷)


(宮崎正弘のコメント)参謀総長を経て、いまは総装備部長でした。神舟7号の打ち上げを指揮した「実績」で、次は軍事委員会副主任という観測がありますが、すでに63歳。どうでしょうか?
 しかし注目すべきは、常万全は前瀋陽軍管区司令員です。次期出世頭の張又侠(現瀋陽軍区司令員)の一年先輩格ということになり、そのうえ現在軍人トップの徐才厚が、この常を気に入っているとか。



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(読者の声3)竹島・尖閣問題でNHKですら「島根県の竹島」と報道しているのに、共同通信はあいも変わらず「日韓が領有権を主張する竹島」、朝日新聞同様に世の中の空気が変わったことが読めていないようです。
韓国の大統領選候補は今後もさらに「反日」を競い合うことでしょうから、次の大統領が誰になろうと日本との関係改善は不可能。
犬を甘やかすと自分が人間よりも上位だと勘違いしますが、韓国を甘やかし過ぎたためにここまで増長してしまいました。
ネットでよく見かけるものにつぎのようなものがあります。本物かどうかわかりませんが、現在の韓国を見ると本物かと思われます。

併合時の日本政府から朝鮮総督府への通達

一、朝鮮人は対等の関係を結ぶという概念がないので、常に我々が優越する立場であることを認識させるよう心がけること。

二、朝鮮人には絶対に謝罪してはいけない。勝利と誤認し居丈高になる気質があり、後日に至るまで金品を強請さるの他、惨禍を招く原因となる。
三、朝鮮人は恩義に感じるということがないため、恩は掛け捨てと思い情を移さぬこと。
四、朝鮮人は裕福温厚なる態度を示してはならない。与し易しと思い強盗詐欺を企てる習癖がある。
五、朝鮮人は所有の概念について著しく無知であり理解せず、金品等他者の私物を無断借用し返却せざること多し。殊に日本人を相手とせる窃盗を 英雄的行為と考える向きあり、重々注意せよ。
六、朝鮮人は虚言を弄する習癖があるので絶対に信用せぬこと。公に証言させる場合は必ず証拠を提示させること。
七、朝鮮人と商取引を行う際には正当なる取引はまず成立せぬことを覚悟すべし。
八、朝鮮人は盗癖があるので金品貴重品は決して管理させてはいけない。
九、朝鮮人には日常的に叱責し決して賞賛せぬこと。
十、朝鮮人を叱責する際は証拠を提示し、怒声大音声をもって喝破せよ。
十一、朝鮮人は正当なる措置であっても利害を損ねた場合、恨みに思い後日徒党を組み復讐争議する習癖があるので、最寄の官公署特に 警察司法との密接なる関係を示し威嚇すること。
十二、朝鮮人とは会見する場合相手方より大人数で臨む事。
十三、朝鮮人との争議に際しては弁護士等権威ある称号を詐称せる者を同道せる場合がある。権威称号を称する同道者については関係各所への身元照会を徹底すべし。
十四、朝鮮人は不当争議に屈せぬ場合、しばしば類縁にまで暴行を働くので関係する折には親類知人に至るまで注意を徹底させること。特に婦女子の身辺貞操には注意せよ。
十五、朝鮮人の差別、歴史認識等の暴言に決して怯まぬこと。証拠を挙げ大音声で論破し沈黙せしめよ。
十六、朝鮮人との係争中は戸締りを厳重にすべし。仲間を語らい暴行殺害企てている場合が大半であるので、呼出には決して応じてはならない。
 最後から二番目の「朝鮮人の差別、歴史認識等の暴言に決して怯まぬこと」というのはまさに現在の状況です。
韓国は事後法で親日派の財産を奪うという近代以前の国です。韓国がオリンピックを開催した1988年に起った「大沢プレス事件」では社長が日本大使館の公用車に乗っている所を襲撃されて一ヶ月以上も拉致監禁された。社長は結局、5000万円の補償金と大統領側近など政府筋に2000万円もの裏金を支払う事で開放されました。給料不払いだのと問題になった「スミダ電機事件」も同じ頃。今の中国も撤退しようとすると日本人は空港で逮捕されかねない。中国進出は株と同じで余裕資金で行う、あるいは全部捨ててもいい、くらいの覚悟がないとできませんね。
広州の反日デモの映像では毛沢東の写真が多数掲げられていました。あまりにも格差が拡大している中国、「不患貧 患不均. (乏しきを憂えず、等しからざるを憂う 孟子)」あるいは「有国有家者、不患寡而患不均、不患貧而患不安」、「国を有(たも)ち家を有つ者は、寡(すくな)きを患(うれ)えずして均(ひと)しからざるを患え、貧しきを患えずして安からざるを患う」
という言葉があります。
農村部よりよほどまともな生活をしていても金のかかる都市部では底辺層と感じる人間が増えているのかもしれません。派閥争いのデモごっこならいいのですが、底辺層の不満に火が点いたらどうなることやら。
共産党の高級幹部が子弟をアメリカなどに脱出させている現状を見ると共産党支配もあまり長くないのでしょう。
  (PB生、千葉)


(宮崎正弘のコメント)いま中国でおきていることはご指摘の通りです。高官の子弟はあらかた海外逃亡の準備終了です。ヒラリーが言ったように「中国は長くは持たない」



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(読者の声4)先ず尖閣防衛を固めよーー中、韓、露を分断し「当面の敵」を1つに絞れ
 尖閣諸島への中国当局黙認での香港活動家上陸、竹島への韓国の李明博大統領上陸、北方領土へのロシアのメドベージェフ大統領上陸と、先月から今月に掛けて領土問題が同時噴火している。
これらの動きは、現下の日本の弱体化と対米関係の混乱状況を狙った上で、3国が水面下で連携しているか、阿吽の呼吸で平仄を合わせている要素が少なからずあるだろう。

 これらに対するに、現政権のように個別の対応で右往左往する以前に、全体戦略、グランドストラテジーが必要である。
クラウゼヴィッツの格言、「戦争は他の手段を以ってする政治の延長」を持ち出すまでも無く、外交と戦争に関する戦略の定石は、ほぼ同じである。即ち、敵は分断し離反させ、当面1つに絞らなければならない。

 竹島、北方領土は、韓国、ロシアが実効支配している上、両国は当面はそれ以上の領土・領海拡張の意志と余剰国力を持っていない。一方、中国は領土・領海拡張と資源争奪の野心を隠さず、日本が実効支配している尖閣諸島を「核心的利益」と位置付け公言し、今秋の共産党大会後の習近平体制もそれを引き継ぐと見られる上、秋には大船団での活動家の上陸が計画されている以上、「当面の敵」は当然に中国という事になる。
尖閣問題に関しては、具体的には以下の方策が喫緊に必要である。
●領土領海防衛関連法案の強化と共に、この成立を待たずに尖閣への海上保安体制の強化、自衛艦による援護体制強化、陸上自衛隊もしくは警察官の常駐、多用途港湾施設の建設、事態発生時の複数シナリオによるシミュレーション及び実地訓練、米軍との具体的協力体制確定、ASEAN諸国との連携、国際世論への訴え、及び日中二国間対話の強化等が必要である。

 一方、竹島、北方領土問題に対しては、当面は以下の方策が適切である。
●今回の竹島上陸問題は、李大統領の個人的保身から出た要素が強いため、日本は国際裁判所提起や日韓通貨スワップ協定の非延長等の手続きを冷静に進めつつも、常に逃げ道を用意してやり、今冬の韓国大統領選の結果と新大統領の対日政策を見極めて、対処する事である。

●北方領土問題は、首相当時のプーチン氏が東日本大震災後、天然ガスの融通を申し出たように、文字通りプーチン大統領がキーパーソンであり、交渉の脈がある。
シベリア開発、日露の天然ガスパイプライン敷設への投資等は、両国の共通利益になりWIN・WINの関係を築けるが、日本側が愚図愚図しているため、ロシアが北方領土で挑発して来ているとも言える。
積極的に打って出て、プーチン大統領の国内的立場を強化する事が、恐らく北方領土問題で日本に対し譲歩する余地を広げるだろう。
また、東欧・中東では、ロシアと米国の利害は相反するが、極東・太平洋では、中国への牽制も含めそうではないため、日本は米露の橋渡しを務め得る可能性すらある。
 「国際的な大義を伴う長期的国益の追求」の外交理念の下、総合的な戦略のグランドデザインを立て、各国に対して当たるべきである。
 
 なお、中国は「当面の敵」かも知れないが、決して永遠の敵ではない。しかしながら、現代に於ける時代遅れの帝国主義国は、その野心を未然に屈し民主化し、その牙を抜かなければならない。
  (KS生、千葉)


(宮崎正弘のコメント)9月7日からでしたか、ロシア極東のウラジオストックでAPECが開催されます。
一昨年、ウラジオの開発ぶりを見に行きました。無人の原野を開発して道路を造り、橋を架け、リゾートホテルと国際会議場を建設していました。原野をジープで行ったときは迫力がありました。貧困のなかでもロシア人は誇りというモラルがあります。これは中国人と朝鮮人は持たない。
 プーチンが号令をかけての「ウラジオストックAPEC」。オバマは来ませんが、日本はどれほどのチームを率いて行くのでしょうかね。
 国際政治のマキャベリズムから言えば、日本はロシアを梃子とする必要が断固として存在するのですが。
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(1)「バブル破産の現場をみにいく」(『北国新聞』、8月13日号)
(2)「パオトウの怪」(『月刊日本』9月号、8月23日発売)
(3)「レアアースと石炭でバブル破裂の震源地になるのか、内蒙古自治区」(『エルネオス』九月号、8月31日発売)
(4)「中国の腐敗糾弾デモの背景」(『サピオ』、9月19日号、8月28日発売予定)
(5)「日本化する中国」(『正論』十月号、9月1日発売)
(6)「レアアース・シティ=包頭に行ってみた」(『共同ウィークリー』、9月10日号)
(7)「書評 民主主義の基幹を論ず」(拓殖大学日本文化研究所『新日本学』、秋号)
(8)「日中国交回復四十年 周恩来、トウ小平、江沢民列伝」(『臨時増刊 正論』、九月20日頃発売予定)
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