月曜日, 3月 07, 2016

宮崎正弘の国際ニュース・早読み (goldwater nightmare)

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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 
平成28年(2016)3月7日(月曜日)弐
           通算第4843号 
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 票数を追い上げてきた共和党のクルーズだが
  保守本流はゴールドウォーター惨敗の危惧し、ルビオを撤退させるか
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  3月4日、 保守派コーカス(「保守政治合同会議」)にトランプは欠席したが、この会は共和党保守の集まりであり、ティパーティの支持を強くうけるテッドがトップとなるのは事前予測でも明らかだった。結果はまったく予測通りでテッド・クルーズが40%、保守本流のルビオが二位(30%)、トランプは三位(15%)に終わる。
トランプが欠席したのは、この党の合同大会では、つるし上げを食らうのが確実であり、それよりはほかの州を回った方が有利と踏んだからだ。

 保守政治合同会議は党主流の集まりだから異端児を受け入れないのは当然、しかし、翌日の予備選でもテッド・クルーズが二州では大差で勝利し、トランプとの票差を縮めた。
 実際に党のエスタブリッシュメントからいえば、トランプが正式候補になれば、1964年のゴールドウォーターのときのように、地滑り的惨敗を喫する恐れからである。

ルビオは「まさかトランプが正式候補となれば、党分裂は必至であり、現代の保守主義運動は終焉する」と極端な危機感を煽る。
 ネオコンの論客としていられるロバート・ケーガンは「トランプは共和党が生んだフランケンシュタインであり、皮肉にもかれが共和党を壊すのだ」とワシントンポストのコラムに書いた。

 茶会など保守イデオロギーの強いグループは、危機感でクルーズ支援に走り、ネオコンに至っては「トランプが候補になるなら、われわれはサンダースに入れる」と放言する始末だ。

 実際に票に変化がでてきた。
 クルーズが勝ったカンサス州の得票率は48%、対してトランプは23%と票差が開いており、同じくメーン州では、クルーズが46%、トランプ33%。
他方、トランプの勝ったケンタッキー州でトランプの得票率は36%に対してクルーズは32%と僅差。ルイジアナ州もトランプ41%、クルーズ38%とますますの僅差でクルーズが追い上げていることが分かる。

民主党のほうも、本命ヒラリーはルイジアナしか取れず、サンダースがカンザス、ネブラスカで逆転、じつに粘り強く、反ヒラリー票を吸収した。


 ▼過去の党内の確執とパターンが類似

 2012年の共和党予備選を思い起こすと、パターンは酷似している。
 緒戦で保守陣営は分裂しており、保守派からロン・ポール、リック・サントラム(ペンシルバニア州知事)、そして保守本流からミット・ロムニー(マサチューセッツ知事)、議会ベテランのニュ-ト・キングリッチ、便乗組みにはリック・ペリー(テキサス州知事)が並び、サントラムの追い上げが激しかった。途中で息切れしたあとロムニーと五月まで予備戦をあらそったのは「議会の暴れん坊」=キングリッチだったのだ。
 終盤で保守本流に反撥する保守強行派がキングリッチに一本化を図ろうと働きかけた。ともかく最終的に共和党は挙党体制が組めた。

 カンザス、ネブラスカ、メーン、ルイジアナ州などで票数の変化にみられるように「アンチ・トランプ連合」がともかくも動き出した証拠である。
 単純計算で言えば、トランプの票をクルーズとルビオが合流すれば上回り始めたからである。

 保守本流からいえば、トランプは『邪魔者」「部外者」に過ぎない。ところがイデオロギー的には右にも左にも染まっていない国民から見れば、経済的繁栄に遠く、民族問題、所得格差に悩まされてきたわけだから既成政治家、エスタブリッシュメント打倒をいうトランプに期待する。

 共和党の本陣からいえば、共和党支持者の末端は党の団結とかの呼びかけとは無縁である。これが「トランピズム」の正体で、イデオロギーはなにもない。
 「イズムというよりムードであり、政治の季節にときおり沸騰するが、そのムードをトランプの暴言がうまく掴んだ」と分析するのはバージニア大学のジェイムズ・W・シーザー教授だ。

 オバマ政権の八年間、共和党は現代的な政策適応をとって雑多な派閥、イデオローグの入り乱れた状況から、なんとか党内がまとまり、オバマ政権の無能への絶望から流れがしっかりと共和党期待へ変化したおりに、トランプは党内団結をぶち壊したというのが共和党内の保守本流ばかりか、茶会グループである。

 ブッシュ政権の湾岸戦争直後の不協和音はロス・ペローの分派運動を産み、漁夫の利をクリントンに奪われ、94年にはニュート・キングリッチが下院議長となるや、党内のエスタブリッシュメントが慌てた。

六年間、ニュート・キングリッチが共和党の政策を代弁し、いや党内を掻き荒らし、その結果、ブッシュの息子で保守本流、穏健派の代表、ジョージ・ブッシュ政権を2000年に産ませる。
つねに流れというのは偶然の積み重ねで形成されてゆくのである。


 ▼共和党は宿命の党内対立をいつ止揚できるか

 共和党内の派閥とは、ウォール街派、エバンジュリカル(福音派)、穏健派、エスタブリッシュメント vs 草の根保守派など輻輳した対立関係にあり、だからこそ緒戦で十数名もの候補が乱立するのである。

 しかし派閥、イデオロギー対立の克服をはかり、共和党が選挙になると集票メカニズムに一元化ができた。こうしたメカニズムさえ、トランプは壊したことになる。

 1970年代から80年代にかけて、北東部のリベラル、インテリ、白人などは民主党から、その過激なリベラ思潮を嫌って共和党に流れ、これが南部の保守主義と合流するのがレーガン革命に繋がった。

 この労働者階級とインテリ層、北東部の穏健派は党のエスタブリッシュメントの打算的選挙の思惑とは異なり、したがって党を超えてのスィング現象となる。つまり民主党支持者がどっと共和党へ票を入れる。
 民主党支持の白人労働階級が保守化して共和党へ流れたという傾向ははっきりしており、クリントンはブッシュに勝った後、カメレオンのごとくに自らのイデオロギーは伏せて、ほとんど共和党と変わらない保守路線を歩んだ。だからこそ、彼は二期当選という僥倖の恵まれたのだった。
 
 1990年代の有権者の怒りは、こんかいのトランプのようにパット・ブキャナンが吸収した。ブキャナンは保守主義だがモンロー主義でもあり、日本に批判的だった。ブキャナンは、ニクソン大統領のスピーチライターだった。

かれは「自由貿易反対」「日米安保条約の片務性是正」「不法移民規制」と訴え、緒戦では本命ブッシュを脅かした。

 トランプとのスローガンに共通性がある。
つまり「反グローバリズム」、「不法移民取り締まり強化」、「日米安保条約の片務性是正」(トランプは同時に韓国、ドイツとの防衛条約是正も主張している)、日本の負担増を求めよとするのは有権者の不満を受け止めるポピュリズムが、白人有権者ばかりか、若い層の琴線を揺らすからだろう。
 かれはいうのだ。
 「私はアメリカ人である、ということが第一。第二が私は保守主義者である」。
 

 ▼ゴールドウォーター惨敗という既視感

(補足)共和党主流派がいだく「ゴールドウォーター惨敗の二の舞になる」という危惧感は、「人種差別」「KKKと親しい」などと民主党から逆のレッテルを貼られ、キャンペーンに逆利用されると大敗を喫することである。
すでにトランプに対して人種差別、KKKの親友などと逆レッテル張りがさかんに行われている。

ゴールドウォーターは人種差別主義者でもなければ右翼でもなかった。かれはアイゼンハワーのニューディールに反対し、「小さな政府」を早くから主唱した意味で、保守主義のなかの「リバタリアン政治家」の先駆けである。ニクソン、レーガンの先駆者という評価になる。

 ゴールドウォーターはアリゾナ州でデパート経営の息子として裕福に育った。志願して、所謂「太平洋戦争」ではインドから、援蒋ルートのヒマラヤ越えも行い、最後は少将で退役した。
 共和党予備選では保守本流のロックフェラーと熾烈な予備選を戦い、最後にロックフェラーに競り勝った。しかし両者の思想的対立点は殆どなかった。
 いまのマケイン上院議員はまさにゴールドウォーターの後継ということになる。
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  樋泉克夫のコラム 樋泉克夫のコラム 樋泉克夫のコラム
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樋泉克夫のコラム
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【知道中国 1378回】    
――「支那人は自國を賛譽し誇稱して、外人を貶す」(安東11)
   安東不二雄『支那漫遊實記』(博文館 明治二十五年)

   △
 ■汕頭:「人情勤儉にして、利を見て難を避けす、外国貿易、逐年繁榮に赴けり。英、美、普、丹、蘭、澳等の各國領事舘あり」
  ――ここにも日本領事館はなかった――

 ■英領香港:「(イギリスが1842年締結の南京条約によって香港島を領有して以来)漸く各國の商民輻輳し、殊に英政府は此地を自由貿易港とし、輸出入の物貨に關税を課せざるを以て、五大洲の郵船商船の往来寄港するもの逐年頻繁を加え、貿易?々盛昌を極め、東洋第一の停泊所と稱せらるヽに至れり」。「日本領事舘あり、廣東、汕頭、瓊州及び葡領澳門港を兼轄す。三井物産會社、日本正金銀行等の支店あり、其他日本人の商店數戸あり」

  ――香港に至って初めて我が商店と領事館があった。とはいえ在香港領事館は「廣東、汕頭、瓊州及び葡領澳門港」までを取り扱うわけだから、外交的にも欧米諸国に較べ余りにも手薄としかいいようはない。やはり当時の日本は中国南方には余り関心がなかったということだろう。日清戦争前夜だけに理解できないわけでもないが、やはり南方にもそれ相応の外交工作・テコ入れは必要ではなかったか。欧米諸国に伍すためにも――
 以下、安東の筆は風俗人情に転ずる。
 先ず「支那人の婚姻」の項。「支那人の慣例儀式を重んずる人民なる事は世人の夙に知る所なる」と書き出され、華僑の結婚について筆を進める。

 「彼の慘怛悲痛を強忍し、千艱萬苦を冒して、殊域に漂泊し、苟も利の収む可き、pmぱる地には、如何なる困難に逢遇するも移住し、他邦人の忍ぶ能はざる所にも、彼等は之を忍び、耐へ難き事をも耐へて、逐々として勤險勞働する支那人は、その數無慮三百萬人を下らず。彼等が自國に送り、若くは携へ還る金額は年々二千萬圓を越ゆるものあり。彼等多年異境に艱苦して、多きは數千圓、少なきも數百圓を齎らし、得々として故郷に還るは、以て其の婚資に供せんと欲するなり」

 中国では結婚に莫大なカネがかかる。だから赤貧洗うが如き一般庶民には結婚はムリだ。だが「支那の俗」では、成人しても妻帯できない場合は無能者としてバカにされる。これこそを「深羞」とする。だから故郷を離れ出稼ぎの旅に立つ際は、身を粉にして働いて蓄財し、結婚に漕ぎ着けようとする。「以て支那人が如何に婚姻を重んじ、其の費用を愛まず、有妻者は社會に信用ありて、無妻者の輕侮せらるヽかを想ふ可きなり」

 さて貧困者だが、カネが用意できないのだから当然のように「妻を迎ふるを得ず、從って下等社會に無妻者の多き事ハ」いうまでもない。だから「車夫、人足、船夫等勞働者の群集する地に於てハ針、絲及び古き衣片等を入れたる籠を携ふる婦人徘徊して、彼等の着用せる襤褸の上着、服引等の修繕を爲す者あり」

 次いで女性について。「支那の婦人は?育なく氣品なく、幼時より閨室に蟄居し、男子と同席するを得ず、從順と靜肅とを最上の美徳とし、寧ろ卑屈と幽閉とを生涯の務めとするなり。(中略)要するに、支那の婦人は世界中最も不幸なる婦人の位置なる可し、物食ふ美粧の人形にして、百年の苦樂を郎に寄せ、機械の如く、動物の如く玩弄せらるヽ者なり」

 そこで確かに日々の生活に苦しめられてはいるが、「下等社會の婦人」は「卑屈、無?育なる點に至りては中流上流の婦人と毫も異なる事なし」であり、「吾人より視れば之れ却て幸福と謂ふ可し」ということになるらしい。

 冒頭の「緒言」には「余は病痾の快癒を待て、朝鮮、西伯利亞を經て再び北清に入り、更に見聞する所を擴め」とあるが、安東のその後は不明としておく。
《QED》
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 読者の声 どくしゃのこえ READERS‘OPINIONS 読者之声
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(読者の声1)貴誌前々号「トランプ」の政治スタイルについて。
 米国のトランプ現象は個人による一過性の現象とみるべきなのか。私は米国の情報社会の変化があるとおもう。農産物と似た情報の産直だ。
 インターネットが生の情報を直接提供してくれる。
これまで、テレビ経由の解説で遠い国の話であったものが身近に感じられる。ユーチューブの威力は協力だ。欧州の難民の暴行騒ぎを見ると、TVが言うような他人ごとの「難民はお気の毒」ではなく、「これは大変だ」になるのである。他人事から自分の問題になってくるのだ。
そこで専門家を信じないで自分で判断するようになる。
米国人はエスタブリッシュメント嫌いといがそれは金持ち階級だけのことではない。マスコミ権力も嫌いなのだ。マスコミの偽善と猫なで声にはウンザリなのだ。そしてマスコミの無責任性も分かった。
日本でも有名なテレビのキャスター六人組が雁首を並べて、政府の偏向報道批判に抗議したが価値観、論理が出鱈目で笑いものになっている。彼等は政治権力は腐敗するから、自分たちが批判すると力んでいるが。誰も頼んでいない。
日本の政治権力は共産党独裁ではない。国民が秘密自由選挙で選んだ権力だ。其れを批判するというのは国民批判だ。天につばするようなものだ。それでいて六人組は中朝の共産党独裁国家の暴政には沈黙だ。怖いのだ。彼等は放送局の権力意識の源が何処にあるのか分かっているのだろうか。放送局は占領軍GHQ の反日植民地宣伝組織だったのだ。それを継承している。しかしGHQはとうになくなっている。彼等はゾンビーなのだ。
今や情報の量だけなら、マスコミ人も我々も変わらない。それをどう合理的に分析理解し説明できるかである。そうなると多年の個人としての体験、知識の蓄積、知的な訓練が必要になる。こうした点でも有名なキャスターと国民は変わらない。彼等より豊富な体験を持つ人も少なくない。
インターネットによる情報の直接伝搬性が、社会、政治に影響を及ぼし始めた。キャスターは古い。年齢も70代だ。呆けも始まっているが、優れた時局解説はむしろ民間にある。利害を離れているからごまかしがない。小堀桂一郎先生も昨年のアパ歴史論文発表会で、歴史研究のレベルは大学よりも民間の方が高いと話された。時代は急速に変わってきた。既存エスタブリッシュメントの崩壊だ。
  (東海子)



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(読者の声2)新著『中国、大失速 日本、大激動』を拝読しつつあります。
2月に訪台した折、台湾の経済関係者からは現在の円高を深く憂慮する声が聞かれ、蔡英文政権の対中経済政策を不安視する声も聴こえてきました。
 このようなときに出された新著、大いに裨益されるものと期待して読み続けます。
(MY生、板橋)



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(読者の声3)安倍首相が衆参同日選に踏み切るのではないか、との見方が横溢しているが、首相の最近の憲法改正に対する強い意欲など、そのほとんどが同日選に向けての環境醸成と言っていい。
ただし過去2回の同日選を見ても分かるように、何らかのサプライズがなければ、同日選だから与党が必ず勝つという訳ではない。
失敗すれば政権そのものを失う。
 最も効果的なサプライズは衆院解散の時期だが、これは今言われている6月1日解散ー7月10日同日選の投開票では余りに見え見え過ぎて意外性がない。そこで少し時期をずらすという案と、ないと見せかけて当初予定通りの日程で行う場合もある。
 ただしこれでは意外性が少ないので、経済政策や外交政策で上積みが必要。同日選に踏み切るなら、恐らく5月下旬の伊勢・志摩サミットの終了直後に消費税再増税見送りと大型経済対策を打ち出し、そのまま解散になだれ込む可能性が高い。
 いずれにせよ最終的に安倍首相が勝てると判断すれば同日選に突入するし、勝てないと見れば見送り。恐らく最後の一瞬の判断だろう。
現時点では同日選をやる、やらないどちらとも断定するのは早過ぎる。
(加藤清隆)=
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