土曜日, 7月 09, 2016

宮崎正弘の国際ニュース・早読み (中国主導の「ニカラグア運河」も前途は絶望的になった)

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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 
平成28年(2016)7月10日(日曜日)
          通算第4958号  <前日発行>
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 中国主導の「ニカラグア運河」も前途は絶望的になった
  怪しげな香港の会社が倒産の危機に直面、はやくも資金不足
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 中国がパナマ運河に対抗してニカラグアに運河を建設する大プロジェクトは、日本円にして6兆円規模だ。
 全長278キロ、パナマ運河の三倍。気が遠くなる稀有壮大な夢の実現と騒がれた。

ニカラグアのサンディニスタ左翼政権は派手に米国に敵対してきたが、複数政党制になっていまは連立政権である。政権が変わると、スリランカが、あるいはミャンマーがそうであるように、中国主導のプロジェクトはときに中止されたりする。

しかもニカラグアは、なぜか中国とは国交がない。台湾と外交関係がある不思議な左翼的国家、というより反米的な国家である。
隣のコスタリカは白人国家。しかもコスタリカのほうが、中国が出資してくれるので、あっさりと台湾との外交関係を断った。

 米国から見れば、パナマ運河のすぐ北に競争相手もいうべき大運河が建設されると聞けば、安全保障上からも、脅威であり、裏で妨害工作をするだろうと予測してきたが、妨害もなく、地元の環境保全の運動にも、表立った支援をなしている様相はない。
 不思議だなといぶかしんできたのだが、最近の事情が伝わって、ようやく得心が出来た。つまり米国は、この計画は最初から無理で、途中で放り投げてしますだろうと楽観視してきたからだ。

プロジェクトは一年遅れてスタートしたが、着工するやすぐに環境保護団体の抗議活動、土地が沈む農民らの反対運動の激化に見舞われた。

しかし、それらがニカラグア運河のプロジェクトを絶望的にしているのではない。
絶望の原因は工事請負の中国企業の怪しさにある。
総工費を香港のHKND(香港ニカラグア運河開発投資公司)が担うと豪語し、その主体企業は北京に本社のある「信威通信産業集団」の王靖会長、大富豪という触れ込みだから、むろん共産党との繋がりが強い。

 2013年に計画がまとまり、14年に着工され、19年完成という当初の大風呂敷は、風にはためく大旗のようにへんぽんと翻るだけ、じつは2015年の上海株大暴落、人民元急落の直撃を受けて、王靖の懐具合が急激に悪化し、資金枯渇状態に陥った。

 背後にある中国共産党も、国有企業のいくつかに指令して資金を供出させたものの、あくまで「民間企業の事業」と装っているため、それ以上の支援はできない。
というより、世界中で、中国はプロジェクトを打ち上げたまま、出資の段階で、『送金の許可が下りない』などと妙な理由をつけて送金をしていない。
 ドイツの民間空港も、中国の出資が決まったのに、突然、出資取りやめ、ドイツが激怒している。

 対照的にパナマ運河は拡張工事が完成した。
 6月26日、パナマでは完成祝賀式典が開催され、盛大に運送力増加を祝った。背後でほくそ笑んでいるのは米国である。

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 書評 しょひょう BOOKREVIEW 書評 しょひょう BOOKREVIEW 
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 理不尽極まりない中国のやり方にいつまで黙っているのか
  詐欺の常習、えげつない中国に怒りをぶつけよう

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広瀬勝『日本を愛する企業戦士たちへ』(文芸社文庫)
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 中国経済の沈没によって、日本企業はどれほどの被害を受けるか、いや日本そのものが大変な疫病神をかかえてしまう結果とならないだろうか。
 評者(宮崎)は日本の被害額を最低23兆円と想定しているが(詳しくは拙著、石平、福島香織共著『中国バブル崩壊の全内幕』、宝島社刊を参照)、問題は金銭的被害にはとどまらないことである。
たとえば無理難題を押し付け、出国停止にされるケースが頻出した。こうなると精神的トラウマに悩まされる。そうした人的被害、精神的被害を勘案すれば、東日本大震災に匹敵するほどの荒廃をもたらす危険性がある。

 本書は実際に詐欺に引っかかって莫大な金額を騙された実体験をもとに、日本の企業戦士に訴えるかたちをとっているが、その驚くべき中国人の手口、詐取、そして日本人を人間扱いしていない傲慢、残虐、たかりの本質を活写している。
 中国と留学なり、あるいはビジネスなりで多少でもかかわりのある人は心して読むべき本である。
 著者はこう訴える。
 「二度にわたる反日デモで建物に放火されても、機械を破壊されても、商品を略奪され、焼却されても、さらには出国の自由を奪われても日本人は何もしないと中国共産党はたかをくくる。そして昼夜を問わず憎悪感情をむき出しにした反日教育を流し続け、子供たちには反日思想を植え付ける。これは即ち、日本人の生命、日本企業の財産に対する侵略行為におよぶプロセスで確実に中国人の心理に反対動機の形成可能性を減殺させていることを意味する」。
 だから『話せばわかる』相手ではない。

 なにしろ尖閣諸島が侵略される寸前というのに、魚釣島には立派なヘリポートが完成しているというのに、自衛隊を常駐させないほど、日本政府は腰が引けている。
うっかり、「中間線」で譲歩したら、中国は東シナ海に海洋リグを十数基も建て、ストロー方式でわが領海からも資源を盗んでいるのに、抗議もしない。だからなめられ続ける。そればかりか援助をし続ける。
 しかし、その日本からの「援助実績などほとんどの中国人は知らない。恣意的に誇大化した南京事件の犠牲者数の流布に余念がない」
だから始末に負えない。
 実際に現場で被害に遭うのは社命で派遣された企業戦士とその家族である。
 いまこそ企業戦士よ、立ちあがれと著者は激をとばす。実際に甚大は被害を体験した著者でなければ書けない生の声である。
 評者は、著者の広瀬氏とはセミナーやテレビ討論番組で何回かご一緒したことがあるが、熱情的な人で、話し方にも使命感がこもっている。
 本書が中国と取引のある企業人ばかりか、マスコミ関係者、若い諸兄にも広く読まれることを望みたい。
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  読者の声 どくしゃのこえ READERS‘ OPINIONS 読者之声
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(読者の声1)米国のマスコミは宮崎さんが指摘されたようにワシントン・ポスト、ニューヨーク・タイムズ、ロサンゼルス・タイムズの主要3紙がいずれもリベラル(左翼)で、わずかにウォール・ストリートが保守というのが実情。ワシントン・タイムズはほとんど影響力がありません。
 テレビはFOX以外は全てリベラルです。
私も所属していた20数年前のホワイトハウス記者のリベラル率は、宮崎さんご指摘の7割を少し上回っていたような実感があります。少なくともホワイトハウスで共和党支持だという記者にお目にかかったことがありません。
 ちなみに日本のマスコミも大同小異。首相官邸クラブ所属記者の9割は多分左翼であり、辛うじて自民党記者クラブで7~8割といった感じでしょうか?
従って各紙が「アベ攻撃」に終始するというのは当然の成り行きです。 
(加藤清隆)


(宮崎正弘のコメント)テレビの政治評論家にしても、加藤さんら少数を除いて、みんな左翼ですからね。亡くなった三宅さんが懐かしくなります。



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(読者の声2)アメリカ政府は一昨日に北朝鮮の金正恩委員長を名指しで人権侵害者とし、金融制裁の対象者と公表しました。
この動きは、アメリカがいよいよ北朝鮮の体制を崩壊段階に入ったとみていると理解すべきだと思うのですが、日本のジャーナリズムにはこの視点からの緊迫感を持った報道が為されていません。
宮崎先生のご見解をお聞かせください。
(SSA生)

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アメリカにおける知的エリートの暴走
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アメリカがトランプの話題で、沸騰している。
 不動産王のドナルド・トランプは、大統領選挙へ向けた予備選挙が2月に 始まった当初は、アメリカの知的なエリートが支配するマスコミから、お 笑い芸人(ボードビリアン)もどきの奇矯な泡沫候補だと、見られていた。
 私もすっかり、そう思い込んでいた。私は年2回、ワシントンに通ってい るが、アメリカの知的な社会としか、交わってこなかった。
 いま、アメリカでどこへ行っても、トランプと並んで大きな話題となって いるのが、日本でほとんど報道されていないが、トイレ(便所)である。
 5月に、オバマ大統領が大統領令を発して、男性であっても、女性であっ ても、自分がそう認識している性別に従って、男女どちらのトイレを使っ てもよい、ということにした。
 出生時に届け出た性別によって、トイレの使用を強いるのは、ゲイ、レズ ビアン、性同一障害者に対する差別だというのだ。
 この大統領令をめぐって、アメリカは大混乱だ。全米が賛否に沸きかえっ ている。自治体によっては、大統領令に従うことを拒んでいる。チェーン ストアが顧客に従来通りに、出生時の性別によってしか、トイレを使うこ とを認めないときめたところ、ボイコット運動の標的となっている。
 来日したアメリカの親しい友人が、「いま、アメリカで流行っている ジョークがある」といって、「ケネディ(大統領)のレガシーは男(マン) を月面に送った。オバマは男(マン)を女性トイレに送った」と、教えてく れた。
 昨年月には、『ニューヨーク・タイムズ』紙が、大きな記事を載せて、 「ミスター」「ミセス」「ミス」と呼ぶのは、差別であるからといって、 そのかわりに全員を「Mx」と呼ぶべきだと、促した。私はいったいどうMx を発音したらよいのか、分からなかったので、アメリカ大使館員に確かめ たところ、「ミックス」というそうである。
 これは、氷山の一角にしかすぎない。差別反対主義者たちが、旧来の社 会常識を大きく変えてきた。日本でも、セクハラ、パワハラからヘイトス ピーチまで、模倣されるようになっている。

 トランプが知的エリートたちの予想を大きく裏切って、大統領レースの 先頭に躍り出たのは、所得格差がひろがるなかで、金持ちと庶民のあいだ の溝が、深まったのに対する不満が爆発したことによると、説明されている。
 ハイテク化に加えて、経済の構造改革が叫ばれてきた。その追風を受け て、経済効率が向上して、金(かね)が金を生むわきで、人手が省かれて、 庶民の労働価値が低下してきた。
 トランプ現象は、社会が高学歴の知的エリートによって、支配されてき たことに対する反乱である。素朴な庶民にとっては、祖祖父、祖祖母から 使ってきた言葉を使ってはならないとか、ミスターとか、ミセスは差別に なるとか、男が女性トイレに入ってもよいとか、バカバカしいにもほどが ある。
 庶民にとっては、もう、いい加減にしてほしい。男女の区別があって、 何が悪い。このところ、アメリカでは「チェアマン」(議長、会長)と いってはならない。「マン」が男を意味するからだ。「チェアパーソン (人)」といわねばならない。数百年も使い慣れてきた言葉のどこが、悪 いのか。
 もっとも、日本でも「痴呆症」が差別になるから、「認知症」というよ うになった。それだったら、「不妊症」は「妊娠症」というべきだ。警察 庁が「婦人警察官」の「婦」が女が帚(ほうき)を持っているから差別だと いって、「女性警察官」と呼び替えるようになった。
 私は帚で掃除するほうが、心が籠っていると思う。
 歴史を振り返ると、男女の区別や、言葉が乱れると、文明が滅びること を教えている。もう、アメリカの真似はやめたい。
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 宮崎正弘の新刊案内  http://miyazaki.xii.jp/saisinkan/index.html
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宮崎正弘のロングセラー 
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『トランプ熱狂、アメリカの反知性主義』(海竜社、1404円) 
 http://www.amazon.co.jp/dp/4759314938/
『中国大恐慌以後の世界と日本』(徳間書店、1080円)
『中国大失速、日本大激動』(文藝社、1620円)
『「中国の終わり」にいよいよ備え始めた世界』(徳間書店、1080円) 
『アジアインフラ投資銀行の凄惨な末路』(PHP研究所、999円)
『日本が在日米軍を買収し、第七艦隊を吸収・合併する日』(ビジネス社)
『日本と世界を動かす悪の「孫子」』(ビジネス社。1188円)
『吉田松陰が復活する』(並木書房、定価1620円)
『中国・韓国を“本気で”見捨て始めた世界』(徳間書店 1080円)
『台湾烈々  世界一の親日国家がヤバイ』(ビジネス社、1188円)
『中国 大嘘つき国家の犯罪』(文芸社文庫、713円)

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<宮崎正弘の対談シリーズ> 
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宮崎正弘 v 田村秀男、渡邊哲也『中国経済はどこまで死んだか』(産経新聞出版)
宮崎正弘 v 馬渕睦夫『世界戦争をしかける市場の正体』(ビジネス社、1188円)
宮崎正弘 v 室谷克実『悪あがきを繰り返し突然死の危機に陥る中国と韓国』(徳間書店)
宮崎正弘 v 宮脇淳子 『中国壊死』(ビジネス社、1188円)
宮崎正弘 v 石 平『私たちの予測した通りいよいよ自壊する中国』(ワック)
宮崎正弘 v 渡邊哲也『激動する世界経済!』(ワック、994円)
宮崎正弘 v 室谷克実『日本に惨敗しついに終わる中国と韓国』(徳間書店)
宮崎正弘 v 小川榮太郎『保守の原点』(海竜社。1620円)
宮崎正弘 v 室谷克実『仲良く自滅する中国と韓国』(徳間書店、1080円)
宮崎正弘 v 川口マーン惠美『なぜ中国人とドイツ人は馬が合うのか?』(ワック)
宮崎正弘 v 西部 遭『日米安保五十年』(海竜社)  
宮崎正弘 v 佐藤 優『猛毒国家に囲まれた日本』(海竜社)
       ◎み□◇▽や□○ざ◎□○き○ 
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(休刊予告)海外と地方講演旅行のため7月24日から8月3日まで休刊します。
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宮崎正弘のホームページ http://miyazaki.xii.jp/
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(C)有限会社・宮崎正弘事務所 2016 ◎転送自由。転載の場合、出典を明示
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