月曜日, 5月 20, 2013

『 そういえば正之助には、もともとマクロバイオティックの生みの親である桜沢如一の『魔法のメガネ』や『永遠の少年』の影響がある。とくに「身土不二」「一物全体」「陰陽調和」は正之助の哲学にまでなっている。ただ、その真っ只中になぜかオートバイが爆走してくるところが、いささか変わっている。カッコいい。のちに、ぼくも正之助のこのようなオートバイに乗った加速的生命感覚のようなものについては、何度も感じている。ぼくもまた『二十一世紀精神』に「法華経は21世紀にオートバイに乗ってやってくる」と書いた口なのだ。第469夜のロバート・パーシング『禅とオートバイ修理技術』を参考にされたい。』
http://1000ya.isis.ne.jp/0866.html
より。
昔子供が生まれた頃読んでいた本、ZEN AND THE ART OF MOTORCYCLE MAINTENANCE   AN INQUIRY INTO VALUES  ROBERT M. PIRSIG
の邦訳を再び買って読んだが 、どうも読後感が当時の印象と一致しない気がして、こんな本だっけ!?と思っていた。当時は正確には結婚直前で、自分で著者の自問自答の要点をノートに書きだしたりしていた。そのノートも数年前、書棚の整理などでどこかへ行ってしまって、今またブログで取り上げようとは思いもおよばなかった点を反省している。で、当時読んだ本は、親戚の家を借りていてそこの書棚に高価なアラビア語ー英語辞典などと共に置いてあったが、建物取壊しで無くなってしまっていた。今、また実家の取り壊しを目前にして、いろいろな思い出のアルバム、本類、絵画などを捨てざるをえない現実に遭遇して、自分の思い入れがない品物はゴミ扱いされることを、されざるを得ないということを思い、身近に大切に保管してないものはいつしか忘れ去られるとの思いが募る。

それでネットで記憶を頼りに断片的な言葉から検索していたら上の記述に出会い、そこから、第469夜へいった。
http://1000ya.isis.ne.jp/0469.html

『 バークレーの書店にも、ニューヨークの書店にもどっと並んでいた。まだカリフォルニアにドラッグの香りがぷんぷんしていたころで、誰もがイージーライダー気取りだった。
  禅とオートバイという奮った「合わせ技」に背中を押されて買ってみたが、かなり深遠なことが書いてあるのでへこたれ、結局、通して読んだのは日本語になってからだった。』などの書き出しであるが、この方も写真にあるような本を読んでの感想のようだ。

『本書はパーシグと妻シルヴィアと11歳の息子のクリスとパーシグの友人ジョンとが、四人でオートバイの旅をしながら各地をめぐってさまざまな体験をしつつ、またオートバイをメンテしつつ、他方でパーシグが記憶を奪われる前の世界を精神的に旅をするという、そういう二重の構成でできていたドキュメンテーションなので、クリスがいなくなってしまったことは、実の父親としてのパーシグにとっても、精神の旅人であろうとしてきたパーシグにとっても、大変な欠如であったろう。』
などと書かれている箇所を見て我が目を疑った。

なぜかというと、記憶の中ではパーシグとクリスは親子、友人ジョンとその妻シルヴィアがそれぞれCB77とBMW R60に乗って旅をしていたと信じていたので。

そこで、再度購入した2006年版の英語版をみると、問題の箇所は
"Up ahead the riders,John Sutherland and his wife, Sylvia, have pulled into a road side picnic area."となっていて、私の理解通りシルヴィアは友人ジョンの奥さんだとわかる。では、何故大学教授でもあり、著名編集者でもあるM氏がこのような文章をお書きになったのか。

それは、この早川文庫の翻訳者の訳文にまずその原因があろうと思われる。そこには、
『前方の二人、ジョン・サザーランドと妻のシルヴィアが沿道のピクニックエリアに入った。』と訳されている。

その5ページ前には『妻と私と二人の友人がこうした田舎道の良さを知り始めたのは、数年前のことであった。』という文章があるので、友人ジョンの後ろに(BMWの後部に)妻を乗せてもらって、と解釈してしまったのであろうと。あいにく、M氏はバイクに興味がおありのようだが、免許はないそうである。普通、バイク乗りの感覚では、余程の事がない限り、友人のバイクの後ろに自分の奥さんを長距離ツーリングでは乗せるという発想は私だったら絶対にない。

さらに日を変えて検索していると、ある日手が勝手に動いて、『息子と私とオートバイ』と検索していた。すると、たくさん該当して、あ、これだ!と思った。
http://blog.inmycab.com/uncategorized/444/

『先日思いがけず古本市で、1976年初版の「息子と私とオートバイ」(ロバート・M・パーシグ 早乙女 忠 訳)を手に入れる事が出来ました。既に傍らには某市営図書館に30年以上返却されずにある同名本があるのですが、いろんな書込や日焼け、シミ、なにより装丁がボロボロで返却叶わず…の状態でしたから、手垢の薄い美本に出会えたのは啓示かな、と20年ぶりくらいに読み返してみました。

原題は「ZEN AND THE ART OF MOTORCYCLE MAINTENANCE」

よきものとは何か、
 あしきものとは何か—-
 パイドロスよ、そうした事柄について
 人に教えを乞う必要があるだろうか。

そんな冒頭の言葉からはじまる内容は、オートバイ旅行の本というだけではありません。奇しくもバイクの免許を取った年に出会った本で、初めて読んだ頃の十六歳の私には、かなり難解な内容でしたが、放り出すことなく予備知識を仕入れては読み返してみる、を数年繰り返す希有な読み物でした。三十年以上経った今読み返しても内容が腑に落ちるということはありませんが、長い時間が経過したから思い当たることもあったりするんです。』などとあり、さらに
『※1990年に五十嵐美克 訳版「禅とオートバイ修理技術」という題で再販されましたが、内容のイメージはかなり違います。興味のある方には、早乙女 忠 訳版「息子と私とオートバイ」の方を強くお勧めします。』とまで書いている。

でさっそくアマゾンから中古で再高額の初版本を購入した。最初に購入したのはこの文庫本であったようにも記憶しているが、早乙女訳ではちゃんと
『前方を走る友人のジョン・サザランドとその妻シルヴィアが‥』と訳されて誤解のしようがない上に、5ページ先の誤解の導入部となった箇所も早乙女訳では『女房と私と二人の友人が‥』となっていて、原文も" ‥that my wife and I and our friends‥"となっている。

いっぽう後から出た早川文庫の翻訳者五十嵐美克氏関連では、
http://sho.tdiary.net/20120528.html
の「ただの日記」がおもしろい。

『ちなみに著者パーシグの乗るバイクは作中には登場しないが、1964年製のCB77に乗っていたことはあるそうだ。文庫版の表紙(ハーレー)はミスリードだね。もっともWikipediaの本書のページにはかつてこの記述があったらしいが今はないので、この旅で乗っていたという確証はないのかも知れない。作中にはハーレーからパーツを取るシーンがあるが、タペット調整の記述はパラレルツインのものなので、なんだかよくわからない。まぁ、パーシグがおそらくハーレー乗りじゃなくて良かったよ。アメリカ人のハーレー乗りが偏見抜きでBMWを評するのは難しかろう(←これも偏見)。』
などとあり、私が原著者の乗るバイクがCB77であるらしいことをどこで知ったのかは今となってはわからない。おそらく当時の書評か、バイク雑誌記事などで小耳にはさんだのだろう。当時はステレオでトライアンフの排気音などを二人で聴いたりしていたものだった。それには、裏面にTX650とカワサキZIIの両方の排気音なども収録されていた。

Robert Pirsig's 1964 Honda CB77 Superhawk was an otherwise unremarkable bike that transported Pirsig and his son across the northwest U.S. in the summer of 1968. This road trip captivated Pirsig on a number of levels and inspired him to write his first book, Zen and the Art of Motorcycle Maintenance. A meditation on science, philosophy and life, Persig's book melds Socrates to two-wheeled transport. Acknowledged by the Guinness Book of World Records as the most rejected book to become a bestseller (it was turned down by 121 publishers and has sold over 4 million copies), the epic journey of Zen began with this humble Honda bike.

Read more: Searching for 10 Classic Motorcycles—and the Legends Behind Their Handlebars: Exclusive Book Excerpt - Popular Mechanics 
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後から翻訳された本のカヴァー裏に親子の写真がチンマリと掲載されている。サザランドのBMWはキック式だが、パーシグのCBはタイプIIのセル式らしい。前へ蹴りだすタイプのキックがついていない。




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