金曜日, 10月 05, 2007

放射性同位元素C14によって存在が証明された極小期

マウンダーの指摘した謎の70年間は、記録の欠如というようなものではなく、確かに何かの異変を示している。そこで、古記録の示す太陽黒点の変化が、この地球上にどのような影響を与えたかに関心が集まることになるであろう。

炭素の放射性同位元素は、おもに地球の上層で、銀河系を飛び交う宇宙線の作用によって、窒素原子から作られるという。その宇宙線の流れは、太陽活動によって影響をうけ、たとえば活動が活発なときには、磁場の作用によって宇宙線が地球から遮蔽され、生成される炭素14の量がへり、反対に活発なときは増加することになる、とされている。

過去にどれくらいの炭素14が大気中にあったかを測定できれば、太陽活動の程度が予測できることになる。生物の体内に、通常の炭素12とともに取り込まれた炭素14は、生物体内で半減期(だいたい、5570年といわれる)にしたがい崩壊してゆき、もとの窒素に戻って行く。その通常の炭素12と崩壊してゆく炭素14の比率から年代の推定が可能となるわけだが、逆に年代のわかっている物質を分析できれば、その時代の放射性同位元素割合がわかる。

この関係から太陽活動の変化を読み取ることが可能となる、と解説されている。

樹木の年輪は、樹齢を知るだけでなく、いろいろな過去の気象の影響を蓄積している。炭素14による年代測定は1940年代後半に始まったというから、その歴史は人間で言えば還暦に相当する年数の経過を経ている。1958年にオランダのヘッセル・ド・フリースが、17世紀鋼板から18世紀前半にかけて年輪中の炭素14の存在比に著しい異常のあることを最初に発表した、という。この異常は、炭素14の存在比がマウンダー極小期に急激に増加しているといい、それはすなわち、太陽活動のこの間、きわめて静かであることを意味する、とエディ氏は説明している。

どういうわけか、当時このデータはあまり歓迎されなかった、という。しかし、今では世界中の樹木の年輪でそのことが確認されている、という。炭素14はいわば世界中の木々に太陽の活動記録を残していることになる。

学名をピヌス・アリスタータというマツは、世界中でもっとも古い現世生物で、このマツの年輪を分析することによって、少なくとも紀元前5000年までの炭素14の記録をさかのぼることができるという。

わたしたちは、マウンダー極小期を謎解きに用いて、ルイ14世やガリレオの時代よりはるかに古い約7000年も昔の青銅器時代以前にまで、太陽の長い隠された歴史を解読できることになった、とエディ氏は誇らしげに書いている。よく犯罪捜査では、ひとつの事件の解決が、より大きな問題を白日下にさらすことが起きるが、このマウンダーの論文の検討は、まさにそういうケースとなったわけである。

結果から原因をさぐる問題を、一般に逆問題といい、たとえばボケ画像から、もとの画像を復元したりすることができる。この例は、アメリカ映画でも使用され、コンピュータで一週間近くかけて、死体のわきに残されていたポラロイド画像から、写された人物(ケビン・コスナー主演)の画像を復元していた。

また、医学では心臓の電位変化などから、心臓病の特性をすいていしたりと、コンピュータと関連していろいろ利用されているが、火事場での出火原因の特定や、犯罪捜査なども典型的な逆問題のひとつと
いわれる。演繹の推論と帰納の推論とを組み合わせて、原因を突き止めて行く。歴史学も、基本的にそうした性格をもつが、人々はあまりそうした側面に注意を払わず、主観に偏った解釈を広めようとしたりする。

従軍慰安婦決議とか、集団自決問題への解釈なども、結果から原因を主観的に決めようと、特に主張する陣営にとって有利な解釈を結論付けようとする運動から起こる、といっても過言ではないような気がする。変な方向にまたまた脱線してしまったが、逆問題は大変に面白い側面をもつ。

過去5000年の間、マウンダー極小期のような太陽活動の異常期が、少なくとも12回は生じている、という。それらは50年から数百年におよんでいる、という。マウンダー極小期と比較されるもう一例がシュペーター極商機で、これは1400年から1510にかけて続いた、という。この期間にはオーロラや肉眼による黒点の報告はほとんどなく、また皆既日食時の観測に構造を示すコロナ報告もまったくなかった、という。

いっぽう、異常に活発な太陽活動の存在も明らかになった。数千年を尺度とすれば、現在の太陽はかなり活発なほうに分類されるが、これをはるかに上回る期間も中世にはあった。およそ1100年から1300年にかけての極大期である。歴史学でも、12世紀は荘園がどんどん開墾されたり、人類活動の活発期にも当たっている。

エディ氏の考察では、現代は活発なほうの変動期にあたり、1959年に史上最大の黒点が観測されたが、これがピークなのかどうかは、まだわからない、という。

また炭素14も、近代以降の石炭や石油の燃焼により、現代の炭素14の生成が不自然になっている、という。ちなみに、寒い時期と暖かい時期の炭素14の存在比のグラフでは、寒いときで約20%近く増加し、暖かいときには15%程度の減少を示している。

話のついでにいえば、大気中の酸素は大部分が原子量16の酸素16だが、ごく微量の重酸素18がある、という。酸素16と酸素18の比は、大気の温度によって変化し、気温が高いと酸素18は増加するという。それで、やはり各年輪に含まれているその存在比をしらべれば、対応する特定年度の気温が推測できる、という指摘もある(「年輪の証明」、高橋宏明著、1979年、地産出版)。

アメリカのリビー夫人がやはり戦後創始した方法で、彼女は屋久島の千年スギについてそれをやりとげ、9~17世紀にわたる気温変化のグラフを発表した。2.5度Cくらいの幅での変化であるが、・・・。

この高橋氏の著書にも、最近やかましい『地球は冷えて行くか』、『温まりつつあるか』についても有力な示唆がえられるのではないか、とあるようにその頃から、地球の温暖化説と、氷河期にむかっている、という説とが対立していた。最近は、いわゆる温室化ガスの増加と思える温暖化が進行しているように見えるのだが、果たして、予測どおりに行くのかどうか、これは逆問題でも解けない未来予測ではある。

なかのひと

2 件のコメント:

sho さんのコメント...

こんばんは、お久しぶりです♪

今日は、先日のリベンジで秩父まで足を伸ばしました。
とはいっても、今日はスタートが遅くなったので、浦山ダムという秩父市街地からほど近い所までしか行きませんでした。
もう少し山手まで行けたらもっとよかったんでしょうね~。

自転車通勤は続いているようですね~。毎日1時間強の往復、いい運動でしょうね。これから寒くなるので大変でしょうが、頑張ってください♪

ブログに書かれていましたが、確かに通勤ユースであれば、リッターバイクは持て余すかも。カブもいいですし、黄色やピンクナンバーのスクーターぐらいでもいいかもしれませんね。

nature さんのコメント...

お疲れさまです。

私も自転車通勤で少々お疲れモードですが、・・・西東京あたりの渋滞かどうか70キロで5〜6時間なら、平均速度は自転車並、^^;)。

御まけに逆光では、さぞかしつらい面もおありだったのでは、と気になります。

299号ではああいうミニ公園があるのは、大体わかりますが、吾野の手前ぐらいかな?

浦山ダムは仕事でも行きましたが、ちと寂しい感じがしますね、特に秋の夕暮れともなると。

まあ、人それぞれの思いの秩父といえば言えると思いますが。

三峰のロープウェイもとうとう廃止が決まり
さびしいかぎり。数年前行ったときは、山の斜面すれすれに頭上を何往復もしていましが(山頂付近)。

江戸時代から身近な霊場として栄えた歴史背景が最近は変わってきてはいるし、何しろ少子化で、自民惨敗の原因を、地域格差の反動などといいますが、この少子化を抜きには考えられない。

脱線しましたが、私が津久井湖の先まで行くことを考えると少し気が重い感じがしますが、それと同じでなければ幸いです。

最近忙しく、三連休は残務整理です。明日以降のバイク日和をお祈りします。

NHKでめずらしく、東京裁判での判事達の心の揺れを特集していました。裁判崩壊を辛うじて食い止めたのは、ニュルンベルグ判決が台無しになることだけは避けたい、というヨーロッパ政府の強い姿勢で止むなく従わざるを得ない、ということ、今更自明のことを、と思う認識ですが。

そんなわけで、文章が固くなりました。