日曜日, 1月 13, 2008



http://www.cc.kyushu-u.ac.jp/RD/watanabe/

『学会や研究集会での発表や、そこでの議論を聞いていると、ある「知識を」を持っていることが前提となって話しが進んでいく場合がよくあります。特に数値計算の分野では「××法」と名のつく方法が山のように登場します。・・・この記事は、科学技術計算の主役のひとつである連立一次方程式の数値解法に登場する手法および用語の解説です。』ではじまる渡部善隆先生の手になる数値計算の各手法の解説集で、パソコンを買った当時最初に取り組んだのがBASICによる行列プログラミングだったので、当時を思い起こしながら、懐かしいものに触れるがごとく、拝読した。元は、九州大学大型計算機センター広報、Vol.28,No.4(1995)で発表されたものをを加筆・修正したものとのことわりがある。

とかく単調になりがちな、数多い解法を分類・整理されたのみならず、当然のことながら100近い文献を網羅し、それらのさわりを脚注にダイジェスト的に表示され、門外漢である私にも、比較的抵抗感なく読めた数少ない好著とでも言った読後感であるが、あまり書くと僭越とのお叱りも受けるかもしれない。

数値解法の全体像をまず示され、それぞれの大分類、直説法、反復法、共役(きょうやく)勾配法、Gaussの消去法のアルゴリズム、Gaussの消去法は安定か?についてやく80ページにわたり、解説されている。

『なお、最後の章でGaussの消去法の安定性に関する(ある面で恐ろしい)話題を紹介します。こちらも「知識」として持っていると、たとえば座長をしていて質問に窮したときや、懇親会で知らない人に囲まれたときなどに役立つかもしれません。』などと「はじめに」に書かれており、思わず昔の冷や汗をかいたことを思い浮かべるとともに、先生の語り口に引き込まれた。

連立一次方程式の解法についてよく使われる方法として,直接法、反復法、共役勾配法とざっとみわたした後、どれが最も優れた方法なのか知りたくなりますが、いざ比較となると行列Aの条件(次数や形状など)や、計算機の性能、欲しい精度などのいろいろな条件を加味しなくてはならないので、誰もが納得するような比較は簡単ではないとされている。

逆にこれだけたくさんの手法が淘汰されずに残っているというのは、連立一次方程式の決定的な解法が未だ提案されていないことの証明でもあります、とされている。

私も、微分方程式の学会へ紛れ込んだことがあって、東工大の先生から、私の専門は数値計算です、と自己紹介されたことがあったが、お名前は残念ながら失念した。

科学技術計算になぜ、連立一次方程式が使われるのかは、薄々知ってはいたが、渡部教授は簡潔にこう述べておられる。

『微積分の概念は、自然現象や社会現象を数学の言葉でモデル化することを簡単にしました。微分方程式や積分方程式のような無限次元で関数方程式を数値的に解く場合は、数学モデルを有言次元の近似モデルに置き換えることが必要です。

情報処理技術の急速な発展は、有言要素法・境界要素法・差分法などの近似モデル化の研究を多いに助けました。

連立一次方程式は、この近似モデルを具体的な数値にする段階でしばしば登場します。そして他の計算に比べ、計算時間がたくさん必要なことと、ちゃんと解けていないと後で大変困るという意味で、数値解析の中心部を占める大切な解法のひとつです』、とされている。

有限要素法の教科書を、学生時代に買ったが、そこには例えば航空機の機体にかかる応力の解析に、機体表面を多くの部分にモザイク状に分割し、それらをつなぎあわせて一つのシステムとしてモデル化して解析し、成功を収めたというようなことが書いて有り、最初から行列の計算法で始まっていた。

戦後華々しくジェット航空機として登場した英国航空のコメット機は、幾度も大西洋上で行方をくらまし、事故調査委員会は、膨大な経費をかけて機体を水圧による繰り返し荷重試験を実施、当初想定された時間よりもはるかに短時間で、機体に亀裂が生じることを「発見」し、以後の機体設計の貴重な教訓となった。佐貫先生は、その名の通り、彗星のようにデビューし、その名の通り消えて行った、・・と。

アメリカで発展した有限要素法は、事前にそうした危険を解析するための切り札となった、と理解している。

それで、このマニュアル中でも、脚注に特色があるのであるが、Newton-Raphson法と連立一次方程式の関係の章の最後に、『非線形方程式の数値解法においては、連立一次方程式を解く必要がしばしば生じます。』
とあり、脚注に文献ではなく先生のご体験として、『この大きなながれを押さえていないばっかりに、修士論文の発表会で「結局それは何を計算するんですか?」という(温かい)質問に絶句してしまい、著しく心証を悪くした人を知っています、ご注意ください」などというのもある。



数式処理ソフトのMapleでは、連立方程式の解法コマンドに、gaussjord(A)というのがあり、最近知った。

これ一発で、簡単な連立方程式であれば答えがでる。jordというのは、ジョルダンの標準形の名で知られる人の名かとも思ったが、ガウスヨルドとも読める。

脚注には、『"Jordan"は有名な数学者Camille Jordannさん(1838-1922)ではなく、ドイツの測地学者Wilhelm Jordanさん(1842-1899)の名前から来ています。したがって、ドイツ語読みをすれば「ヨルダン」が正しいそうです[91].』などときめ細かい配慮を感じてしまう。

数学者のちょっとした人物像の紹介なども結構脚注にあり、興味深い。また、マセマティカによるグラフ出力のほかに、こんなイラストもあって、笑ってしまう。



なお、先生の冒頭のサイトには、マセマティカ備忘録なども掲載されている。


なかのひと

2 件のコメント:

sho さんのコメント...

Natureさん、こんばんは~♪

今日はとても寒かったですねぇ~。明日は今日以上に冷える見込みとか…。ちょっと尻ごみするぐらい寒いですね(++)

話は変わりますが、年始にアマチュア無線のニューイヤーパーティというのに参加しました。その際、ご近所の方と交信する機会があり、武蔵野市アマチュア無線同好会というクラブに入会することになりました♪
地元との交流の一環として、なかなかいいかなぁと思ってます。来週の土曜には新年会にもお呼ばれしちゃいました(^^ゞ

無線を楽しむには、自宅の屋上にでもアンテナを上げるのが一番いいのですが、社宅住まいはなかなか厳しいです。
機会を見て、バイクに無線機を搭載しようかなぁなどとぼんやり考えています。昔、スクーターに搭載していた経験があるんですが、ギア付だとちょっとしんどいかなぁとも思いますが…。

nature さんのコメント...

おはようございます。近況報告ありがとうございます。奥多摩はそんなに寒かったですか?

こちらもう休みなしモードで、寒かろうと風が強かろうと、休日は晴れさえすればバイト要員たちと手分けして進めないと間に合いません。

会社への途中、忍者900らしきバイクに無線機アンテナをつけたバイクが車の間に止めて有りますが、夜でも出かけたりしているようで、一度ライダー氏を見て見たいと思うこの頃です。とてもきれいにしてあります。

カワサキ車は、リヤのスペースが広いのでしょうか?

sho様より体重が多い分、寒さには鈍感なのかもしれません。朝は、気持ちよくバイク通勤。張りきらないとこなせない仕事のせい!?^^);

昔、グリップヒーターというのを付けていました。グリップが太くなってしまうのが難ですが。BMWは、グリップラバー自体がヒーターになる3万前後の製品がありましたが、・・・。雪のアルプスで素手で運転していた写真、大きなカウル、狭いハンドル幅で
カウルの裏に手は隠れるのですが、・・

後、エレファントミーティングというのがドイツでよくあって、みな、凍てつくサーキットなどで、バイクで集まりキャンプ。水平対向エンジンなどはたき火でヘッドを暖めたり、・・・皆で過ごせば寒くな〜い?なんてね。ワイルドなバイクの魅力、ガッツがあればいろいろと広がりますね。