木曜日, 10月 11, 2012


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宮崎正弘の国際ニュース・早読み(人民元オフショア市場について)
20121011 5:01




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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 
   平成24(2012)年10月11日(木曜日)
        通巻第3784号  
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 「人民元のオフショア市場」は香港、シンガポール、ロンドン
  東京市場は人民元オフショア市場開設で中国に義理をはたす必要はない
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 通貨でも日本の市場を奪取しようとする中国は「尖閣通貨戦争」をしかけているのだろうか。
 通貨覇権をねらう中国は、人民元による貿易ならびに商業決済の通用範囲を急拡大させてきた。

 IMF・世銀システムとは戦後の世界経済の基軸通貨をドルとした、米国の経済覇権の確立が本質だが、この基本スキームに日本円をおしのけて、人民元が鎮座まします、というのが中国の野心である(SDRはドル、ユーロ、英ポンド、スイスフラン、日本円でなりたち、日本円のシェアは3%。周小川・中国人民銀行総裁は、このシェアを人民元が代替すると主張してきた)。

まっさきに「北京の代理市場」である香港が「人民元オフショア市場構想」に乗ったのは当然の流れだが、つぎにロンドンがビッグバンにおけるウィンブルトン形式にあやかるように、市場を開設し、中国の国債を扱う。
 ウィンブルトン方式とは、他国に会場を貸して、繁栄するテニス大会にヒントを得て、ロンドン市場を海外投資家と金融機関に開放した。

 人民元オフショア市場は香港とロンドン(嘗て香港の宗主国だ)が大きく、この列にシンガポールが猛追している。
シンガポールは華僑の人口国家、その金融センターを香港と競う以上、人民元オフショア市場への参入は不可避的である。

 しかし日本が、この列に加わる義理も必要性もない。まして米国が「日米同盟」を唱い、中国の通貨覇権の動きに不快感を表明しているのに、日本が積極的に加わることは国益にかなうか、どうか。ニューヨークタイムズは日本が中国国債7800億円を購入するとしたとき、批判的な記事を書いた。


▼通貨も経済主権をまもるということではないのか?

 中国が対日経済制裁をだまって実施している現実を前にして、日本は静かに人民元オフショア市場を凍結するのが国益というものだろう。

ほかに僅かながら台北、クアラランプール、そしてルクセンブルグに人民元オフショア市場が開設された程度で、世界的規模で今後の発展が望まれた矢先、中国は不況入りした。人民元の需要が激減した。

 ところが、シンガポール市場で空前のIPO(株式公開)を人民元オフショア市場を利用して、かの李嘉誠がこころみる。
 李嘉誠といえば、誰もが知っているが東洋一の財閥であり、香港の不動産王であり、彼の旗艦企業の「長江実業」と「和記(ハッチソン・ワンポア)二社だけの時価総額が香港株式市場の30%前後というジャイアン。

この李嘉誠がシンガポールで経営にからむ「ARA アセット・マネジメント社」が、つぎに「ダイナスティ REIT」(REITは不動産担保信託)をシンガポールの人民元オフショアに上場し、8億ドルを調達しようというのだ。

 金額的には小さな計画だが、なにしろシンガポールの一年定期預金の利息は0・25%、かたやREITの平均利回りは6-7%だから、現在のシンガポールの人民元オフショア市場の規模は879億ドルに膨らんでおり、人民元預金総額370億ドルを上回っている。
 
 「ダイナステイ REIT」は李嘉誠が持つ上海、大連、南京の商業ビルを物件担保として、その不動産運用益を配当に充てるという(ウォールストリートジャーナル、10月10日付け)。

シンガポールの人民元オフショア市場でのREITはすでに25社が上場しており、8社にとどまる香港より大きくなっている。
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読者の声  DOKUSHANOKOE どくしゃのこえ 読者之声
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(読者の声1)中国の知識人が「中国よ、理性を取り戻そう」とネットで呼びかけると、たちまち500人の署名が寄せられて、中国も捨てたもんじゃないな、と思いましたが、前向きな中国人知識人もいるのですね。
  (HG生、名古屋)


(宮崎正弘のコメント)理性のある知識人が僅か500名しかいないというのが問題でしょう。あとは理性とは何のことかわからない。
IMF総会が東京で開催されるというだけの理由で周小川・中国人民銀行総裁はドタキャンですから。歴代日銀総裁に、これほどの理性欠如人間はいなかった。
 これで通貨直接取引の凍結・中断を日本は宣言しても二の句もつげないのではないでしょうか。
それにしても財務省、日銀も決断がにぶい官僚ばかりです。



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(読者の声2)貴誌通巻第3783号で「なにか目に見えない焦りが当局にあるようで、不況突入、不動産暴落の恐怖と闘いながら、しかし日本に経済制裁をやらかして事態をますます悪化させている」と書かれましたが、まさに正鵠を射ています。
これだけやってやっと上海指数はたった100上がって、2100台にやっと届きました。年初2600台であったことを考えれば、お飾り程度の効果です。確実に、「連休大動員作戦は、最後の徒花とな」ります。
また11月には日本政府との通貨スワップ協定が韓国政府の要望で700億ドルから130億ドルになりますが、ウォン大暴落、韓国大不況がまっています。

貴誌前号で「YU氏」が(読者の声2)で「それにしても朝日新聞とは、何故ここまで媚中姿勢を維持するのでしょうかね。媚中を超えて売国的な存在。この国には言論の自由があり発言に制約はありませんが、それにしても超不快な公器である」
と書かれました。
朝日新聞の本質が現された事件があります。大正時代の米騒動の時、大阪朝日新聞の鳥居主筆が連日、鈴木商店がコメの買い占めをしているという内容の根拠の全くないうそ記事を書きたて、その記事に煽られた民衆が鈴木商店を焼き討ちしました。
その後、全くの濡れ衣であることが判明したあと、小さな訂正記事で済ませました。当時日本の司法当局が機能していなかったのです。ウソ記事を書いて、民衆をだまして犯罪行為をさせたのですから、まともの司法当局なら当然発禁処分にするはずです。
エロ本は発禁にしても、それよりはるかに悪質な朝日新聞を発禁にしなかったのですから。
  (ST生、千葉)



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(読者の声3)貴誌前号でしたが「夕陽さん」と宮崎さんの問答ですが、当該の朝日新聞には一面に大きな村上春樹の顔写真が出ていました。
一瞬「大江健三郎か! と思いました(笑)。村上の寄稿文も読みましたが、ただの反戦主義者、読むべきところはありませんでした。
彼はノモンハンの戦場を見に行ったことがあるといい、「あんな不毛の大地、何にもないところを取り合いしたなんて信じられない」
とかいうようなことを書いてました。
私もノモンハンは行ったことがありますが、この村上ノーベル賞候補作家の発言を聞けば、モンゴル人は烈火のごとく怒ると思いました。
  (HZ生)


(宮崎正弘のコメント)脱線ですが、ウランバートルに戦争記念館がありますが、「ノモンハン」というと通じなくて「あれはハルハ河戦争というのです」と言われました。ウラジオストックでは「日露戦争」の展示がすくないので、「負けたからか?」と聞くと、「あれは『小さな戦争』ですから」とガイドが答えました。



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(読者の声4)自衛隊情報はいつも中国メディアで知るのですが、海上自衛隊60周年観艦式(10月7日~14日)についても中国網(チャイナ・ネット)で知りました。
自衛隊に関する記事に加え11ページにも及ぶ写真の数々、とくに11ページ目は江田島海軍兵学校にさかのぼる五省まで紹介されています。
一、至誠に悖(もと)る勿(な)かりしか
二、言行に恥づる勿かりしか
三、気力に缺くる勿かりしか
四、努力に憾(うら)み勿かりしか
五、不精に亘る勿かりしか


観艦式のロゴが浮世絵の伝統を思わせるものでなかなかです。
今週末は13日(土)まで横須賀・横浜・木更津で艦艇の一般公開、14日は観艦式。
昨年の震災では自衛隊の活動に感謝してもしきれませんが、災害時の活動はあくまで二義的、基本は国防のはず。中国の軍拡がすすむ今、日本の自衛力の実態を自分の目で確かめるのもいいかもしれません。尖閣問題で日中の対立が激しさを増していますが、自衛隊がアメリカの下請けではなく、あたりまえの国軍として日本の守りの要になるのを見る日はいつになったら来るのでしょう。
話のついでに沖縄のオスプレイ報道、「子供が怖がっている」などと報道していますが、テレビニュースの幼稚園児、オスプレイ!! とものすごく喜んでいる。昔から男児は消防自動車、飛行機、戦車などなど動くものはなんでも大好き。いいかげん結論ありきの捏造報道は止めにしてもらいたいですね。
  (PB生、千葉)


(宮崎正弘のコメント)オスプレィは沖縄から尖閣諸島まで給油なしで40分で飛べます。まして一機で兵員を20名運べるスグレモノ。
中国が尖閣に『偽装漁民』を上陸させても、排除できるために配備しているのであって、オスプレィ反対をいう左翼は『中国様、はやく尖閣に上陸して下さい』と結果的に言っていることになりますね。
 この場合、トモダチ作戦のように、米軍は直接関与しないが、陸上自衛隊の輸送には協力するということでしょう。



  ♪
(読者の声5)銚子沖で風力発電の実験が成功し、今後東京電力が大規模に風力発電を進めていく旨の新聞記事がありました。
今から10年ほど前、東京電力と東京大学が共同で犬吠岬における風力発電の実験を行い、その結果、犬吠岬の沖合だけで東京電力の全発電量相当の風力発電が可能であることがわかりました。
当時経済産業省は原子力発電を今後の発電技術の中心とした戦略を推し進めていたので、東京電力に圧力をかけて封じ込めてしまいました。
原子力発電の推進が難しいとなると、こっそりと風力発電を出してくる。しかも、10年前に押しつぶしたことが表に出てこないように犬吠岬ではなく、風力の点でも周りの人家の多さの面でも条件のはるかに悪い銚子沖で実験してほとぼりの冷めるまでは犬吠岬を避けているのでしょう。
現場で働く下級職員では立派な人を知っていますが、経済産業省は上に行くほど悪くなります
  (ST生、千葉)
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 樋泉克夫のコラム  樋泉克夫のコラム  樋泉克夫のコラム
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樋泉克夫のコラム
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【知道中国 814回】       
  ――いずれ廈門も、いや既に地産覇権の地ですかねえ


  ▽
地方都市では、というより地方都市であればあるほどに、街の中央の一等地に異様に大きな政府庁舎を新築し、その周囲を広大な緑地が取り巻いている。
日本でもバブル期には役人が税金を湯水のように使って必要以上に贅沢な庁舎を競って建てたものだが・・・。

もっとも中国の場合、豪華宴会場からバー、カラオケまで備えている地方政府庁舎も珍しくはないというから、無駄遣いの程度は日本の比ではないだろう。
加えて歴史的に「昇官発財」「公財私用」という伝統を持つ民族である。幹部になったら位を昇るごとに権力は増し、権力が増した分だけカネを招き寄せる。これが昇官発財。殿サマと越後屋だ。

 エラクなったら、公の資産をネコババしてまで私腹を肥やしても当然視。これが公財私用だ。07年から今年6月までの5年間に66万人の党員を汚職などで処分したというが、氷山のだろう。
公財私用も極まれり、である。
因みに10年末で党員は8027万人余。

さて廈門市政府庁舎にもバーやカラオケが備わっているかどうかは迂闊にも聞き漏らしたが、街のど真ん中に威容を誇っていることに変わりなかった。
庁舎の正面入り口を出て大通りを右手に少し進むと、周囲をグルッと塀に囲まれた広大な建設現場だ。クレーンが動いている。建設資材を積んだ大型トラックが頻りに出入りしている。塀には「全球第三 最佳発展商 擁城市緑肺 詩意無限 鷺島中央 嘉禾路商圏」などと大きな字で麗々しく記し、市の心臓部ながら豊かな緑に抱かれ詩情溢れ、しかも繁華街にも近接という好条件を高らかに唱っている。
信和・中央広場(CENTRAL PARK)と名づけられた超高級超高層マンションを建設中だ。

このプロジェクトを手掛け、自ら「全球第三 最佳発展商(世界第3位の優良不動産デベロッパー)」を名乗っている信和(Sino)集団の親元は、シンガポールの繁華街で知られるオーチャード・ロードにショッピングモールやホテル、マンションなど膨大な高級不動産物件を擁する遠東機構(Far East Organization)だ。

遠東機構を一代で築き上げたのが廈門近くの?田で生まれた故黄廷芳(ウン・テンフォン)で、長男の黄瑞祥(ロバート・ウン)に任せた香港での事業の中軸が信和集団である。

いまから15年前の香港返還前後から親北京の姿勢を鮮明に打ち出し、以来、香港では繁華街の尖沙咀を中心にショッピングモールやホテルを、郊外ではリゾート型高級マンションを手掛ける。
新聞第1面全面を使った派手で積極的な広告戦略が香港では夙に有名だ。

鼓浪嶼島の見える海岸通りから少し外れたリゾートで世茂海峡大廈(天璽MO SKY MANSION)を建設する世茂(SHIMO)集団を率いる許栄茂も、廈門近くの石獅生まれ。文革期半ばの70年代初頭に香港に現れ、薬屋の店員から身を起こし株式投資、衣料・繊維製造を経て不動産へ。オーストラリア国籍取得後に故郷の石獅にUターンし、いまや北はロシア国境の綏芬河市から北京、湖北、無錫、南京、福州などで事業を展開。この集団のシンボルが、上海の浦東地区で偉容(異様?)を誇る金茂大廈だ。

中心街のみならず、海岸沿いを車で走って目に付く大型ショッピングモールや高層マンションは、名称から判断して、その多くがフィリピンの華人企業家経営と思われる。

ところで財産作りの伝統商法に「地産致富」がある。
不動産で儲けた泡銭に権力が引き寄せられる。そこで札束で権力と同盟し金儲けに励もう、である。
まさに現在の香港がそうだ。やはり廈門の街にも地産致富の臭いがプンプンだが、致富の前にバブルが破裂したら地産致富ならぬ悲惨致貧は必至だ。そこで黄泉路上行(運が尽きたらあの世行き)するだけ。
どんな地獄も大躍進当時の飢餓地獄に較べたら屁みたいなものだろう・・・よ。
《QED》


(ひいずみかつお氏は愛知大學教授。京劇、華僑研究では第一人者。著作多数。このコラムは弊誌に独占的に連載されております)
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 宮崎正弘のホームページ http://miyazaki.xii.jp/
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(C)有限会社宮崎正弘事務所 2012 ◎転送自由。転載の場合、出典を明示
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