日曜日, 7月 12, 2009

いつも行かない本屋さんへ、久しぶりに出かけてみた。埼玉に来て、かれこれ二十年以上たつがそれまで都内の本屋さんしか体験がなく、さいたま市内ならともかく、そのすぐ周辺部でさえ、書店の本のジャンルの少なさと、まともと思われる本の少なさには、少なからず落胆させられていたのだが、ここの本屋さんは、かなりな田園地帯にもかかわらず、規模の大きさや中身の濃さから、いつも訪れて期待はずれに終わった記憶はほとんどない。
http://www.shinyusha.co.jp/~top/02mook/kasumigaseki.htm
そこで、偶然上記の漫画本を見つけた。晋遊舎ムック 『マンガ霞が関埋蔵金』—官僚政治にナタをふるった男の物語—
で、作者は例の事件で失脚された、元竹中大臣とコンビを組んで補佐役をしていたとされる、高橋洋一氏とある。そのタイトルを見て、こういう本を出したりしていれば、官僚たちから憎まれるだろうな〜と思わず思った。それで、この先生の、銭湯での高級時計窃盗事件は、仕組まれた事件との報道があったが、そうだとしても、なぜ今ごろこの時期に!?という思いは払拭しきれずにいた。しかし、このタイトルを見て、一瞬にして、これはどことは言わないが、官僚たちが仕組んだ逮捕劇で、アメリカの意向云々ではなさそうとはじめてわかった。

その日は、家に帰ればAmazonnから『売国者たちの末路』が届いているはずだった。そっちを早く読みたいので、その本は買わずに別の雑誌を買って帰った。翌日腰を据えて読み出したら、植草・副島両氏が書いた本にも、私の推理を裏付ける記述が出てきた。高橋氏は、東大数学科出身の財務官僚で、自身も認める数学オタクだそうだ。そして、皆さんにもご記憶があると思うが、『さらば財務省』(2008年、講談社)では、かなり本音をだいぶ書いてしまい、副島氏によれば、自分の行動の裏側を読める人間はいない、という思い込みで書かれているそうである。

戦後生まれで初のFRB議長となった、バーナンキがプリンストン大の学部長をしているころ、三年留学し、すっかり洗脳されて帰国。副島氏によると、逆に完全に洗脳されるまでは日本に返さない、ほどだった、という。『バーナンキから「ヨウイチ、ほら日銀はまちがっているだろう』などと毎日のように言われたような推測を副島氏はしている。バーナンキはいまでも、日銀のことを怒りにまかせて『日銀はケチャップでも買っていろ!』と吐いたとは、有名な話だそうである。日銀の白川総裁は、領袖に抵抗して、通貨量をあまり増やそうとはしていないことへのいらだちとされている。

植草氏の見解は、高橋氏の業績にも触れながら、彼は善人だとし、しかし無自覚な人で、『高橋は3度殺しても殺し足りない』という財務官僚の言葉を自分で書いている、といって驚きを見せている。大蔵省からみれば、彼は「戦犯」などという甘いものではなく、大蔵省を壊してしまった男だと。さらに与謝野大臣も『高橋は絶対に許せない』といわれたことまで書いているそうだから、自覚がない人という批評はあてはまるのだろう。
『日本国の司令官クラスの人々が、構造的に、システムとして洗脳の対象になっている。ある特定の考えが脳に植え付けられてしまったら、その人の一生に与える影響はものすごく大きい。』と結んでいる。
http://musiker.nsf.jp/musiker21/soundsofsilence.html
Because the vision softly creeping
  Left its seeds while I was sleeping
  And the vision that was planted in my brain
  Still remain within the sounds of silence
という学生時代に良く謳われたサイモンとがーファンクルの歌詩が脳裏を去来する。
東大の比較文化がご専門の平川教授は、過去の日本のエリートの留学体験とその後の言動を調べられ、留学は同一人物に複数国の留学をさせないと、危ういという意味のことを発表されていた。『若き数学者のアメリカ』を書かれた藤原教授(お茶の水大教授)は、その後、ロンドンに留学して、ご自身みずからが、いかにアメリカかぶれで帰ってきてしまったか反省されている。優秀な人ほど、よろめきやすいのかもしれない。(遥かなるケンブリッジ ― 一数学者のイギリス』新潮社、1991年)

副島氏は、バーナンキにかってほどの力はなく、高橋氏を守る力がなくなっている、としている。『しかし、それ以上は痛めつけるなと。高橋氏はなかば無自覚に、純粋な正義感と国民への奉仕の気持ちから財務省の秘密を次々と暴露した。ところが植草さんは公然と小泉・竹中に逆らった。』

植草氏はhttp://uekusak.cocolog-nifty.com/blog/
で、今日も竹中氏のテレビ出演での言動を批判されているが、かって、大蔵省では二年程竹中氏と一緒に研究された経験やその後の動きから、竹中氏が、小泉内閣に入って以降、金融政策を批判してこられた、という。なかでも、竹中氏のいうことが、ころころと良く変わり、一貫性がないどころか矛盾が多く、他の意見や学説の受け売りが大変お上手なのだという批判は、正鵠を得ているのでは!?ただし、人脈は豊富で、大蔵省時代に培ったものらしい。

そもそも、竹中氏がどうして今日の地位をきわめたか、反対側の意見の立場からよく知る人物であるから、かなりその辺の経緯は書かれている。アメリカが、どのような関与をしてきたのかもわかるようになっている。逆に、総裁選で敗れた橋本元首相のほうがまともだった(愛国者!?)だったとも。
副島氏は、小泉総裁誕生の裏にも、アメリカの働きかけが読める、としている。推理小説よりもおもしろいかもしれない。あくまで、事実をふまえた推理の域をでないのであるが、さもありなんと思う箇所が随所にある。選挙前に、ぜひ一読を勧めたい好著と思うがいかがなものだろうか!?

また、今回副島氏が共著者になって、話が歴史的展開をもふまえ、二重に面白くなった。
http://uekusak.cocolog-nifty.com/blog/
を読んでいると、だいたいのことは推測できるのであるが、今一疑問や説得力が欲しいことがる。副島氏の独自の情報力や見解がかみ合った挿入意見を豊富に見て、かなり満足が行く結果となった。植草氏の二度目の逮捕劇の時の被害者役は、あれは絶対婦人警官が担ったはずだという副島見解は、目から鱗であった。私も、この女子高生は怪しい、とにらんでいた。婦人警官ならおとり役で変装したりは、朝飯前。

それと、帰宅方向とは逆の電車になぜ乗ったのかも、この本で分かった。副島氏は、中川前財務省のへべれけ会見も、事前の女性記者たちとのワインパーティで、女性記者から、ワインにある種の薬剤をしかけられた可能性があり、彼女たちも反論はしていないとしており、仕組まれた醜態会見を想定している。それで、植草氏のパーティでもそういう酩酊を起こしやすくするような薬剤がこっそり入れられたのでは、という推測をしている。植草氏は、推測や憶測でものは言わないようにしているとしながらも、中川前大臣の飲酒後の経過時間と、ご自分の事件での時間経過は、よく一致するように感じている、とまでは応えていた。

小沢元代表の秘書逮捕劇を指揮した、東京地検の佐久間達哉特捜部長は、自分の出世を本気で考え、3月中に事件にしないと、自分の特捜部長の手柄(業績)が何もないことになり、焦っていた、と書かれている。・・・検察庁としては、佐久間特捜部長の個人的な暴走というかたちで、シッポきりで問題を収めようとしている、と指摘している。

植草氏は、高橋氏の事件の章の末尾で、『一部週刊誌は、私が高橋氏の事件について、「報道の扱いが小さすぎる」とあたかも自分と比較して不満を漏らしているような書き方をしましたが、問題の本質はそのような点にありません。警察、検察行政とメディア報道に対する強い不信感にあるのです。』そして、きょうも
http://uekusak.cocolog-nifty.com/blog/
で、サンデープロジェクトや田原氏、竹中氏などを批判している。

副島氏の前書きには、以下の一文がある。

『お会いしてみると、植草氏は実に上品で、温厚で、まるで京都のお久家様のようなひとである。彼は竹中平蔵ら、アメリカの指図のまま動き、犯罪的攻撃をしかける者たちの毒牙にかかった。狙われた愛国者は十字架にかけられる。』

『植草氏は日本国で「郵政民営化」という名の、日本国民の資産の強奪、(アメリカに貢いだ)を行った者たちの所業を、もっとも正確に緻密に分析し指摘してきた一流の経済学者である。そのために植草一秀は、竹中平蔵を守り護衛する、アメリカで訓練された公務員忍者部隊に狙われ、残酷なスキャンダル攻撃で痛めつけられた。・・・』

私も、冤罪事件との指摘を直後に、この副島氏のブログで指摘され初めて納得がいかない原因がわかったような気がしたものである。

なかのひと

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