木曜日, 7月 05, 2007



第二次大戦中、英国はドイツのUボートなる潜水艦の活躍に悩まされたが、ドイツ軍の暗号解読のため組織を立ち上げ、数学者たちをあつめて解析した、という。毎日、傍受された暗号電報の記録を届けるバイクが200台ほど、研究所と各種軍組織との間をひっきりなしに行き来していたという。

異変に気付いたドイツ軍は、さすがに暗号を変えてしまったというが、それも数ヶ月もすると解読され、再び行動半径が探索され、大西洋の藻屑として消えて行く潜水艦が増加したという。この話しは、藤原先生のNHKテキストで読んだが、細かなことは覚えていない。そういえば、昔学んだ統計学のテキストの例題に、
米軍が撃沈したと報告した潜水艦数と、実際の損害数の月別データ(16ケ月分)があって、回帰式を求めるというのが巻末にあった。今エクセルで求めてみたら、y=0.76+1.04xとなった。xは報告数、yは実際の数である。月別最小は2隻、最高は19隻である。(実際の数、19隻のときの報告は13隻)


先日、西尾幹二氏が防衛省の高官に、情報戦略を質したら、アメリカ情報は、米軍筋の垂れ流しを何の疑問もなく頂戴して疑うことをしていない、ということを聞き出し、大変に驚いたことを雑誌かなにかに書かれていたが、平和時に戦争をデザインすることに思いが至らない体質なんだから、いまさら度しがたい体質なんだろうと思った。平和もある条件で誕生し、成長し、やがてある条件が整うと、死に至ることは明々白々、治にいて乱を忘れず、ということばはよく子供の頃聞かされたものだが、最近は、日本がアメリカと4年近くも戦ったことなど御存知ない若者が、けっこうな数いるらしいから、どっちがより深刻か考えてしまう。アメリカにおんぶにだっこで来た弊害だろう。

昨日紹介した、「アメリカの日本改造計画」では、元外務省の佐藤優氏が、日本の占領後、対応した陸軍の
情報参謀の能力を恐れ、対共産主義対策のみに振り向けることに努め、伝統や力をそぐことに努めたと言う。加えて、膨大な図書や資料が失われ、それまで築いてきた資産と人材が失われた損失は極めて大きいと
指摘。国家の独立に不可欠なインテリジェンスをすべて放棄してしまったのは大変な損失と書かれている。

命のビザ伝説の杉原千畝氏は、白系ロシア人の娘を一時妻とし、その家族からかなりシベリア鉄道沿線情報を仕入れていたらしいことは、書物にも、また再現ドラマでも描かれていた。一時妻どころではなく、晩年も文通したり、着物やその他の物を密かに送ったりしていたと、ユダヤ人学者が書いた伝記にはある。左翼の一部はその部分は作り話だろうというのがあったが、私は信じたい。未亡人の方には迷惑なはなしだろうが、・・・。手を尽くして、オーストラリアの養老院に存命という情報を見つけ出し、彼女の許に出向き、インタビューをするところは感動的。彼女の方から、離婚を申し出たこと、夫に内緒で子供を始末していたことなど、夫はとても優しかったことなどが明るみに。その学者の訪問後程なく彼女は幸福な顔で息を引き取ったという。

1930年代にスターリン体制が確立して本格的な内務人民委員部(政治警察、刑事警察、国境警察、諜報機関を統括する機関)が作られ、ソ連国民全員を登録して相互監視するシステムを構築したため、日本の特務機関は浸透できなくなり、情報がとれなくなった、という。


これでは、その後の戦争では負けてしまうと、秋草俊は大変な危機感を持ち、国際標準の諜報員養成所を作らなければと研究を始めたという。(秋草 俊:陸軍中野学校の生みの親で、関東軍情報部長、ソ連抑留中昭和24年死去、陸士26期卒)





佐藤氏は、秘密情報の98%は公開情報からとれる、という。外務省は、新聞の切り抜き如きは、研修生にさせてはならん、などと言っているらしいが、佐藤氏によれば、名刺をデータベース化することは不毛でも、新聞を切り抜きすることは、非常に重要な基礎作業だと言う。これは、「知的生産の技術」に通じる話しだと思う。最初は不毛だと思うが、時折見返していると、大変なことに気付くことがあるものだ。


長年担当されたロシアの場合、新聞・雑誌から95%、学術書から3%の情報がとれたという。

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